なぜ、小学生の自分がそこに居たのか、思い出せない。
「お母さん、スイミングスクールに通いたい!」
そう懇願した記憶は一切ない。
その、なぜか居たスイミングスクールでの記憶は一つだけ。
溺れたこと。
「こっち」
コーチに呼ばれて入ったプールは、とんでもなく深かった。
そこで向こう岸までクロールするよう、コーチは言う。
クロールの仕方が分からないまま渋々泳ぎ出す小学生の私。
案の定、ジタバタするだけで前に進まない。
息をしようと立ち上がろうとしたが、深過ぎて足が底につかない。
必死に水中でもがく私をコーチは片手で引き上げ、こう言い放った。
「なんで泳げないのに、こっちのクラスにいるの!!」
(あの、私を呼んだのは、あなたですけど…)
声を掛ける生徒を間違えたらしい。
大人の言うことは正しい、そう思って疑わなかった純粋だった頃の話。
アラフィフ、今日もそろりと生きてます。