これは、小学生の私が酷い結膜炎で通院していた頃に経験した、苦い思い出である。

 

その日も、いつものように家を出る前に目薬を点眼し、通学した。

 

教室に入り、後ろ向きでランドセルを机に置いて振り返った瞬間、視力を失ったのだ。

 

そこは、真っ白な世界。

 

周囲の声は聞こえるが、何も見えない。

 

一瞬何が起きたのか分からなかったが、見えない理由が点眼薬にあるとしか思えなかった。

 

咄嗟にギュッと目を閉じ、必死に涙を出そうとする。

 

涙で点眼薬を流し出そうと考えたのだ。

 

朝のホームルームが始まろうとしているが、視力は戻らない。

 

手探りでランドセルの中にある物を出し、席に着く。

 

(一時間目の授業が始まる前に見えて!)

 

そう心の中で強く願いながら、握りしめた小さなハンカチで点眼薬を含んだ涙を拭うことを繰り返していた。

 

(このまま、ずっと見えなかったらどうしよう…)

 

不安な思いが自然と涙を生む。

 

授業が始まる頃には、ぼんやりと黒板が見え始めていたが、それでもまだ完全とは言えない。

 

そのあと、どのように学校で一日を過ごしたのかは既に記憶にないが、眼科に行ったことは覚えている。

 

一時的に視力を失った原因は薬が利き過ぎたことらしく、別の点眼薬を勧められたものの怖くて差せやしない。

 

ほどなくして病院を変えたことは、言うまでもない。

 

 

アラフィフ、今日もそろりと生きてます。