今から26年前。

 

短大を卒業した私は就職のため、家を出ることになった。

 

両親は巣立つ娘のために、沢山のものを持たせてくれた。

 

その一つが、包丁セットだった。

 

年月を経るごとに切れ味は悪くなっていったが、それでも愛着があり、また「これぐらい切れにくい方が安全」とも思っていたので、なかなか手放せずにいた。

 

その日も、流しの下に仕舞ってある引き出物が目に留まった。

 

ずいぶん昔に従妹からもらった包丁セットだ。

 

そろそろ、かな。

 

両親が持たせてくれた包丁セットに別れを告げ、新しい包丁をケースから取りだそうとした、その時。

 

勢い余って、手の平を深く切りつけてしまったのだ。

 

危うく、削ぎ切ってしまうところだった。

 

しばらくは片手が使えずに不便だったが、傷口が膿むこともなく塞がり、今では傷というよりも濃いめに刻まれた手相のようだ。

 

 

アラフィフ、今日もそろりと生きてます。