2年程前からだろうか、早朝、何かを叩くような、押すような音が、住んでいるマンションに響き始めた。
ほぼ毎日、ほぼ同じ時間に、誰かが音を立てるのだ。
「ドン、ドン、ドン、ドン、ドン」
決まって5回、その音は執拗に続く。
どれくらい日が経った頃だろう。
何度もドアノブを引き、ちゃんと鍵が掛かったかを確かめる音であることが分かった。
その日は早朝から自室のドアを少し開けていたのだが、ガチャリと鍵を掛ける音のすぐ後に、例の音がし出したのだ。
そして、エレベーターのある方向へ足早に歩いて行く。
その重い足音から、男性であると察しがついた。
❝5回の男❞
私は密かに彼をそう呼んでいる。
アラフィフ、今日もそろりと生きてます。