おわら風の盆。

 

毎年9月1日~3日にかけて富山県富山市八尾(やつお)地区で、夜のとばりが下りる頃に始まる幻想的な祭りである。

 

三味線や胡弓、太鼓、そして唄、それらの哀愁に満ちた旋律にのり、無言で町内を練り進む編み笠を被った男女の踊り手たちは、沿道の見物客とはまるで違う次元に存在しているかのようだ。

 

まだ子供だった頃、夜眠れない時はラジオを子守唄代わりにしていた。

 

その日、ラジオのスイッチを入れると聞こえて来たのが、越中おわら風の盆を題材にしたドラマだったのである。

 

静かにナレーションが入る。

 

「その祭りは夜が更けた頃に始まり、明け方までひっそりと続く…」

「近隣に宿はなく、見物に訪れた客人がその祭りの全てを見ることは叶わない…」

 

ベールに包まれた神秘の祭りだと感じた。

 

演者の台詞やナレーションの後ろに流れる幻想的で妖艶な旋律は耳に心地よく、いつのまにか眠ってしまっていた。

 

いつか、大人になったら行こう。

 

そう誓ったのだが、まだ叶っていない。

 

TVで流れる祭りの様子を見るたび、いつか必ず、と

 

決意を新たにするのである。

 

 

アラフィフ、今日もそろりと生きてます。