元有名タレント講師からセクハラを受け、当然、その事務所を去ったのだが、まだ夢を諦めることが出来ずにいた私は、再びオーディションを受け始めた。
その日、私は映画のキャストオーディション会場で面接の順番を待っていた。
ところが、先に面接会場に入った人たちがなかなか出てこない。
遅すぎる、そう感じ始めてどれくらい時間が経った頃だろうか、興奮して何か大声で叫びながら複数の志望者が会場から続々と出て来たのだ。
一人の志望者に腕を引っ張られて出て来た男性がいた。
主催者の一人だった。
結論を言おう。
詐欺未遂にあったのだ。
映画オーディションを餌に❝次の面接に進むお金❞なるものを搾取しようとしていたというのだ。
「そもそも映画を撮る気もなかったんじゃないのか?」と、主催者に詰め寄る志望者たち。
しどろもどろに答える主催者。
何を答えているのかは聞き取れなかった。
会場にいてトラブルに気づいた多くの志望者たちの乱闘が始まった。
私はどうしようもなく哀しくなり、力なくその場に座り込み声を上げて泣き続けていた。
あの時、号泣している私の背中を優しく撫で続けてくれた女性がいた。顔も声も忘れてしまったけれど、彼女のおかげで私は落ち着きを取り戻したのだ。
こうして、私の幼い頃からの夢は終わりを迎えたのだった。
~完~
アラフィフ、今日もそろりと生きてます。