9年程前の、バス車内でのしくじり。

 

職業訓練校へ入校するための試験を受けに、町まで行った帰りの出来事。

 

鞄の中には、財布、受験票、筆記具、そしてアラーム付きの小さな時計。

 

腕時計を持たない私は、100均の店で購入した時計を当日持参したのだ。

 

あえてアラーム付きの時計を選んだわけではなく、試験会場の机に置いて邪魔にならないものを探したら、それが丁度よいサイズだったのだ。

 

帰りのバスの中。

 

突然、車内に大音量のアラームが鳴り響く。

 

最初、自分の時計が鳴っているとは思わなかった。

 

なぜなら、購入してから試験当日までの数日間、一度もアラームが鳴らなかったからだ。

 

アラームの合わせ方は分からないし、一度も鳴らない。

 

なので、アラームはセットされていない状態なのだと、信じて疑わなかった。

 

なのに!なのに!!ヤツは突然、目覚めたのだ。

 

「俺ァ、ココに居ルドォォ!!」と言わんばかりに大音量で鳴り続ける。

 

次第に周囲の目は一点に集中する。

 

…私だ。

 

アラームの合わせ方も分からないのに、止め方が分かるはずもない。

 

焦った私は、次の瞬間、ヤツのちょっとした隙間に爪を差し込み、渾身の力で真っ二つに破壊した。

 

ヤツは鳴り止んだ。

 

しーーーんと静まり返る車内。

 

恥ずかしさで顔を上げられない私。

 

そこから、どこでバスを降りて、どのように帰宅したのか記憶がない。

 

 

アラフィフ、今日もそろりと生きてます。