しばらくして、私は大学のカウンセラーから

紹介された精神科の病院に歩いて行った。


一軒家の一角が病院になっており、奥は医師

の自宅になっているようだった。

中に入るとたくさんの人が待っていた。



ソファがいくつもあり、横になっている人

が多かった。



穏やかな雰囲気ではなく、どんよりとした

薄暗い雰囲気だった。



私は受付をして、すみの椅子に座った。



2時間程して、やっと呼ばれて、診察室

に入った。そこには40代の男性医師がいた。



私をチラッと見て、どうしましたか?と聞いた。


私が答えると、それをパソコンにうちこんだ。

その後、2.3つの質問がされて、私は答えた。


医師は私の方を見ることはなく、パソコンの

画面しか見てなかった。



うーん、じゃ、いくつか薬を出しておくので

飲んでみてください。

多分、パニック障害かな?

また1ヶ月後にきてください。



と言われた。


初診なのに5分もかからなかった。




えっ?それだけ?

内科なら胸の音を聞いたり、喉を見たり、

なんらかの診察をするのに、精神科って

話して終わり?

そんな簡単に病名がわかるの?

そんな簡単に薬を決めていいの?



と戸惑っていた。



そこへ、医師の娘らしき女の子がやってきた。

小学低学年くらいに見えた。



ねー!!

パパー!

まだ終わらないの?

今日、公園に行く約束したよね?



あー!こっちに来ちゃだめだよ。

お仕事中だよ。

早く終わらせてるからね。

もう少し待っててね。




私はなんだか唖然としてしまった




私にとっては、大学に行けず日常生活を

送ることも難しくて、藁にもすがる気持ち

でこの病院に来たけれど、この医師に

とってはただの面倒な仕事で、私という患者

を少しでも良くしたいとかは思っていないん

だろうと思った。

どうでもいい存在なのだろう。


ため息が出た。




でも、処方された薬を飲むしかなかった。

それ以外に私にできることはないと思った。




帰りは、もう電車に乗ることはできなかった。

また息ができないという苦しみがおきたら

どうしようと恐怖を感じた。




自宅までは40分も歩けば着くだろうと思った。


室内にいるよりも、外の方が呼吸がしやすい

気がして、どんどん歩いた。


15分ほど歩いたところで、雨が降ってきた。



最初は小雨だったが、土砂降りに変わって

いった。




私はずぶ濡れになりながら、このまま

私も雨と一緒に流されて、消えてしまえ

たらどんなにいいんだろうとぼんやり

思っていた。