初めて夏希先生に会った時
あー!騙された!
不登校の子って聞かされて
なかった!
まぁ、でもいい子そうで
よかった!
と言われた。
固まっている私を見て、
にかっと笑った。
すごく正直な先生だなーと少しひいて
しまった。
先生は国立大学の1年生だった。
一浪して入学したと言っていた。
関東出身らしく、〇〇じゃん!とか
〇〇じゃん?と言った。
なんだかテレビの中の人みたいで新鮮
だった。
私が問題を解くたびに
すごいじゃん!
自分で勉強して偉いじゃん!
がんばってるじゃん!
といつもいつも大袈裟に褒めてくれた。
照れ臭かったけれど、
本当は涙が出るくらい
嬉しかった。
ずっとずっと母に
言われたかった言葉だった。
先生が言ってくれて、私の心は少し救われた。
私も先生みたいに大学生になりたいなと
思った。
中学3年生になって、
2週間に1度は部活だけでなく、
教室で授業を受けるようになった。
でも私の居場所はもうないとわかっていた。
友達はいるが、私はゲストのような存在だ。
たまにしか来ない。
みんな優しいけど、私に
本当のことなんて話さない。
私がいる間は繕って、
また私が学校に来なくなったら、本音で
話すんだろうと思った。
3年担任の山崎先生は、私が学校に行くと
本当にめんどくさそうな顔
をした。
きっと、めんどくさい不登校児を押し付け
られたと思っているんだろう。
私に何か言ったりしたりして、また全く
学校に来なくなったりしたら、
何かめんどうに巻き込まれるかもしれない。
だから私とはなるべく関わらず、
早く卒業してくれたらいいのに…
と思っているようだった。
ずっとそんな対応だった。
まともに話すこともなかった。
私が少しずつ、前に進んでいる間
兄は相変わらず、暗い顔をしていた。
通信制高校には通い続けていたが
家にいても苛々していて、
母と言い争いをすることが
多くなった。
私は、早く
不登校をやめなくてはならないと思った。
高校に行って、夏希先生みたいに大学生に
なるんだ。
家を出て行くんだ。