次の日、また起きなかった。




母は昨日にまして苛々していた。





怖い先生に引きずって学校まで連れて行ってもらうから!



と怒鳴っていた。





私は

怖い先生って誰のこと言っているんだろう…と思っていた。






しばらくして、母のよそ行きの声が玄関から聞こえてきた。





怖い先生が来たのか?

と身構えていたら、担任の佐々木先生だった。





佐々木先生は40歳くらいの女性で、数学を担当していた。

とてもきちんとした真面目な先生。

好きな先生だった。





先生は、床に座っている私の横にへなへなと座り込んだ。




そして私を顔を覗きこんだ。





先生は

泣いていた。





ごめんね。

そんなに辛い思いをしていたの?

先生は気づけなかった。

ごめんなさい。





と涙を流しながら言った。






何か言わないといけないと思った。






先生が悪いわけじゃない。


ただ疲れただけ。


学校に行けないんじゃない、行かないだけ。


また2年生になったら行くんだから。


大丈夫なんだから。






でも、何も言葉にできなかった。


何も言えなかった。







先生は私の手をギュッと握ってから、帰って行った。




その後ろ姿を見ていたら、涙が出てきた…






私は先生を悲しませてしまった。

ごめんなさい。

先生は何も悪くない。


そう言えばよかった。