母は前よりも兄を守るようになった。
兄を傷つけることに敏感になった。
この頃から、母は私に対して
意味がない
と言うようになった。
テストで100点をとったり成績が良くても、意味がない。
走るのが早くてリレーの選手に選ばれても、意味がない。
音楽会のピアノの伴奏に選ばれて褒められても、意味がない。
作文が学年だよりに載せられても、意味がない。
意味がない。
母に褒めてほしくて、私の方を見て欲しくて、頑張っても。
母に伝えたくて、一生懸命に話したけど、
全て切り捨てられていった。
私は、母に本当のことを何も話さなくなっていった。
当たり障りのない面白い話を作りあげて、それを気遣いながら話すようになった。
そして
学校で友達と喧嘩してしまったり、しばらく口を聞いてもらえなかったり、授業中の発表で間違えたり、先生に注意されたり、テストの裏を見てなくて裏が0点だったり…
悲しかったり、悔しかったり、寂しかったりという負の感情を封印した。
兄の苦しみに比べたらたいしたことがないことだったから。
頑張っても意味がないと言われるのに、私が失敗した負の感情を話すなんて許されないんだと思った。
そんなことで何言っているの?
と言われるのが、なんだか心底怖かった。
母に嫌われるような気がして怖かった。