しばらくすると、母が迎えに来た。
先生も一緒に保健室に来た。
母は、
先週末にバレエの発表会があったので疲れたのかもしれないです。
と和かに言った。
私はまたか…と思った。
母は私に何かあるとそれをなんでもないことにすぐにすりかえた。
大ごとにならないように、ただただ見ないように葬り去った。
母にそんな気はないのかも知れないけれど、私にはそうとしか思えなかった。
私を気にかける余力は母にはない。
何かあったの?
とか
先生にクラスで何か問題でもあるのか?
とか
聞いたりしない。
先生は私が泣いていたと伝えたんだろうか…
私は自分のことなら母に話そうと思わない。
でも兄のことだった。
兄がいじめられている。
母はどんな顔をするんだろう。
泣くのかもしれない。
先生がゆっくり休みなさいねと言った。
私はあいまいに頷いた。
母は慌ててきたのか、車できていた。
先生に見送られて、私達は車に乗り込んだ。