勝子先生の塾に行く日が来た。



母が早く準備しなさいと言っていた。


私はそれをテレビをぼんやり見ながら聞いていた。


見ているようで見ていなかった。




母が苛々しだした。


早くしなさい!




と言い、私の腕をひっぱった。




私は母の手を強く強く渾身の力で

振り払った。



母は一瞬びっくりした顔をした。




私は

行かない。


と小さな声で言った。




行かないなら父が帰ってくるまで1人になるのに…


と母が呟いていた。




私はほんの少し期待した。


もしかして母は行かないのではないか…と。




でも母は兄と妹を連れて出て行った。


車がガレージを出ていくのをじっと見ていた。


赤いブレーキランプ…そしてウィンカー。



しばらくそこにただ立っていた。




またテレビをぼんやり見ていた。

忍たま乱太郎が始まった。


歌を呟いた。

がっかりして…メソメソしてどうしたんだい…

太陽みたいに…



涙がこぼれてきた。

止められないくらい。


いくつもいくつも頬をつたって床に落ちた。


そして、声を出して泣いた。



あぁぁーわぁぁーぎぁーー




今まで我慢してきた涙が全部出てきた。


ずっとずっとずっと我慢してきた。


なんでもない顔をしてきた。気づいてない顔をしてきた。





でも私にはわかっていた。


勝子先生の塾は特別な塾だ。


私が行く所じゃないんだ。



それでも行くのは


兄のためなんだ。




私が行きたくないと言っても、理由も聞かないで母は行った。




母は兄を選んだんだ。

私を置いて行ったんだ。