兄が怒鳴って、消しゴムを投げつけてきた。

消しゴムは私の頬に当たって、どこかへ転がって行った。


5秒か10秒くらいか…

誰も喋らず、物音1つ聞こえなかった。


いつも奇声をあげてるくね男も昆虫の名前をブツブツ呟く早口男も黙っていた。

ゆりちゃんが大きな目をパチパチさせて私を見ていた。


私はただノートを見ていた。


ポストにてがみを入れる

と書いた自分の字を見ていた。



勝子先生が


はい、じゃ満点の5点!

と言い、私に星のブロックを渡した。


私は床に座った。


兄の番になったが、兄は何も言わなかった。

母も何も言わなかった。


帰りの車の中、母も兄も一言も話さなかった。

長い沈黙が私を責めているようだった。

妹の寝息だけが聞こえていた。


私は音を立てずに静かに泣いた。

対向車のライトがキラキラ光って揺れていた。