神戸のあの日から27年の月日が過ぎた。
その後彼女と会うことはなかった。今どこで何をしているのか、知らない。
今年(2025年)で50歳になるはずだ。元気に働いているだろうか。
時間旅行の終わりに、彼女に手紙を書くとしたら。
お元気ですか。あの日の神戸のこと、覚えてますか。
27年ぶりに君の手紙を読んで、2歳年上の自分よりはるかに大人だったんだなと思いました。25歳の未熟な僕に、「誠実」を身をもって示してくれる存在がいたことは幸運でした。今さらですが、ありがとう。
神戸から3年後、僕も挫折して、あの仕事を辞めました。会社は変わらないものの、違うフィールドに移ってもうすぐ25年になります。
若き日の苦い挫折ではあったけど、折れたおかげで自分が自分でいられる働き場所を見つけられた。きっと君も見つけたんだと信じています。いま官僚を続けていても、そうでなくても、あの時のまなざしのまま充実した日々を過ごしていることを願っています。
君のクリスマスカードを発見したあと、何年か前から気になっていた映画を観ました。「家族を想うとき」というイギリス映画。妥協のないハードな作品でした。もし君が観たらどう感じるだろうと、ふと思いました。
ちなみに僕は支店長などにはなってない。バリバリのヒラ社員だよ(笑)
25歳の自分へ。
神戸は「時すでに遅し」だったね。赴任した彼女とのやり取りをもう少し早く始めていたら、どうなっていただろう。そのタイミングのずれが最後まで響いたように思う。
傷ついたと思うけど、もともと無理筋の告白だったんだ。それでも彼女は逃げずに正面から向き合った。「振る側の作法」を教えられたのは財産だ。ラブレターを送ったことを後悔しないでほしい。
彼女ができた後もラブレターの下書きを破かなかったのは、あの日のことを忘れたくなかったからだろう?おかげで50歳を過ぎて思わぬ心の旅をさせてもらったよ。
でも、この失恋は人生経験の序章に過ぎない。君はこのあとも何度か本気で人を好きになる。神戸の彼女よりも深く苦しい、のたうち回るような恋愛も経験するから。お楽しみに。
(おわり)
