この本には
AppleやSONYをも凌駕する
ノイズキャンセリング機能が備わっている
今やその活躍はとどまるところを知らない、キングコングの西野亮廣氏によって約4年前に書かれた、同氏にとって初めてのビジネス書。
以降いくつかの作品が世に出されていくわけだが、最初の作品ともあって本書にはどれにも増して彼の赤裸々な心中が描かれている。
ひな壇芸人から絵本作家へと舵を切ったあの日のこと、誰よりも熱い思いが誤解を伴って世間へ認識されていく日々。
ちょうど年末に映画公開も控えた『えんとつ町のプペル』にどれだけの想いが込められているかなど、、
今となっては当たり前の価値観も当時は受け入れられなかったのか、といったことが文章からひしひしと伝わってくる。
綿密なロジックに裏付けられた彼の行動を間近に感じながらページをめくっていた時、
ふと、あることに気が付いた。
本書は、上下に設計された余白が異常に多い。
つまり、ページの広さに反し文章が中心に集まったような形をしている。
これが何を意味するか。
ここについて考えるために一度、一般的なビジネス書を想像してみる。
できるだけたくさんの情報を盛り込もうとページいっぱいに書かれた文章。
それらを目で追っていく際、読者の視界には背後に置かれた携帯電話やその奥にあるインテリアが入りこんでおり、無意識にこれを認識している。
それゆえ文章に充てられる意識の割合は、良くて七、八割といったところだろう。
一方で本書はどうか。
大きな余白は良い意味で読者の視界を奪い、全神経を手元の文字に集中させる。
その結果、中心部に配置された文章が
浮かび上がるようにしてこちらに向かってくる。
それだけではない。
読む前には気付かなかったが、本書の表紙の色として採用されている深めのこげ茶色。
これが、大きな余白を囲うようにして唯一目に入ってくる。
重厚な印象を与えるその色は、静かな部屋にひっそりと置かれた宝箱を連想させ、その結果読者は誰も見つけられなかった秘密の書物を読んでいるかのような錯覚を起こす。
心のノイズが取り除かれたこの状態で語りかけられるメッセージが、読み手の心にどう影響を及ぼすかは言うまでもないだろう。
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そういえば西野氏は、自身の発信においてよく「設計」という話を取り上げている。
どんなアクションを起こす際もそこへ来てくれるお客さんの心を想像し、そこから逆算して設計していかなければならない、と。
もし、ここまでの設計が西野氏による意図的なものだとしたら…
我々はもう、彼の手のひらの上で気持ちよく踊らされておくのが好ましいだろう。
さてさて…
読み終わった本は、今宵も本棚に…
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