日本にもかつて、小泉純一郎が「自民党をぶっ壊す」と言って自民党総裁選に勝ったことがあった。「今の体制を変えろ」と訴えたことが小泉の勝因でもある。


私は小泉とあまり深い付き合いはないけれど、「麻雀・カラオケ・ゴルフは、おやめなさい。」という本を出したとき、まだヒラの代議士だった小泉が読み、人を介して「ぜひ会いたい」と申し込んできたので、一緒に食事をしたことがある。その時の第一声が「長谷川さん、今日は愉快だ。僕と同じ考え方をする日本人が、もう一人、日本にいたことがわかった。ただし、僕は自分の身を律する基準として麻雀、カラオケ、ゴルフはやらないけれど、人にまでやめろと言ったことはない。あんたは人にまでやめろと言っている。俺は親友だ」。

これはあまり知られていないと思うが、小泉は永田町界隈に個人事務所を持っていない。だから、総裁公選のときに選対本部を置く場所がなかった。そこで幹事長の古賀誠に頼んで自民党本部の中に一室をもらっている。


投票日の前に山崎拓と、ある会合で一緒になった。山崎が言う。

「小泉は三度目だ。前回は六十票しかとれなかった。今度は八十票取れるという人がいる。本当に、そうなるだろうか」


「今度は小泉が政権を取れると思いますよ」と私は応じた。その通りになったが、山崎本人はこの時の発言に忸怩たるものがあったようだ。総裁公選が終わった後、ある会合で一緒になったら、「この前、お目にかかった時の話は忘れてくれよ」と言った。小泉を支持する派閥の領袖として恰好が悪かったのだろう。


小泉が勝った一番大きい理由は予備選挙にある。予備選挙を最初に導入したのは神奈川県連だった。神奈川県連で予備選挙をやることになったら、隣の東京都連が黙っていない。東京でもやる。東京でもやると言ったら、今度は大阪府連が」黙っていない…ということで、結局、都道府県連が全部、予備選挙を採用した。予備選挙はアメリカで共和党や民主党が大統領候補を選ぶ予備選に似ている。そういう方式をとったことが小泉の新しさであり、それを打ち出したから「自民党をぶっ壊す」という小泉の発言は本物だと受け止められ、そう思っている党員が多かったから小泉が勝ったのである。


出典 長谷川慶太郎著 2017年 世界の真実より引用。