「絶対退院するんだ」
と言っていた、元ファイヤーマンのおじいちゃん

受け持ちか違うので、普段はあまりかかわることがありません。
配膳などでたまに訪室すると、いきなり
「ねぇ、看護師さんの世界も上下関係とか色々難しいんでしょ?」
と横に先輩がいるときに返答に困るようなことを、イタズラっぽく横目でチラッと見ながら小声で言ってきたり


重度の弁膜症だったこともあり
心不全は改善しなかった。
人手を借りることをとにかく嫌がった。
車椅子でロビーにお連れすると、
「リハビリなの」
と、ハァハァ言いながら病棟内を自分で車椅子を押してまわっていた。
どんどん動けなくなり、起こすのを手伝うときも、横目でチラッと見てため息をついていた。
それでも髭剃りは毎朝自分でやろうとしていたことを私は知っています。
夜勤の夜、
痰を必死に吸引した。
でも、なかなか引けなくて。
胸を触れば肺に痰が絡んでいるのがわかる。
うつろになりながらも吸引を嫌がるおじいちゃんを息子さんに抑えてもらい、「ごめんね、ごめんね」と言いながら吸引した。
短い休憩に入り戻ってきたら、先輩がモニターの前に立っていた。
モニターをみたら、早かったレートが落ちていた。
その直後にストンとアレストになった。
ナチュラルなので、なにもせず。
淡々と当直医に死亡確認のコールする先輩。
私はまだ、ステルベンに慣れることが出来ない。
最後に体を拭いたとき
髭剃りをしました。
ごめんね
本当は自分でやりたかったですよね。
事例研究の症例は、「お買い物事件」と決めていた。
私と歳が変わらないある男性患者のAさん。
心臓移植の待機患者リストへエントリーをするために、他病院に入院していたけど、体重コントロールや食事・水分制限が出来ずに脱落。
厳しすぎる節制に精神的に不安定になり、元々のかかりつけであったうちの病院へ戻ってきた。
そして、心臓移植の待機リストへのエントリーを目指すべく、薬物治療をしていた。
もちろん、水分や食事制限も。
うちの病棟は優しい。
例えば看護師のその優しさは紙一重で、時に患者さんにホテルと間違えさせてしまうこともある。
Aさんは隠れて買い食いしていた。
スタッフはその事実を知っていたが、見て見ぬふりをしていた。
申し送りや記録には「また隠れて○○を食べていた」と話題になっても、腫れ物を触るかのように、誰もアクションを起こそうとしなかった。私も含めて。
頚部から入った点滴は抜けることはなく、量が増えたり減ったり。
むしろ、体がむくみ体重は増え続け、点滴も増える一方だった。
ある日。
Aさんが、点滴棒を押しながらエレベーターから降りてきた。
たまたま、廊下をウロウロしていた私と目があった。
そのとき、点滴棒にぶら下げられた買い物袋の中にホワイトチョコレートやインスタントスープ、カップラーメンが入っていることに気付いた。
じーーーっと買い物袋を凝視する私にAさんも気付いて、バツが悪そうに部屋に戻っていった。
私は、これは絶対に本人と話をしなきゃいけない、そう思った。
その日のチームリーダーに相談した。リーダーから話をするか、私からするか。
リーダーからだと、私が「チクった」みたいで、逆に医療者への不信感を高めてしまうのではないか、と思い、私から話をさせてもらった。
Aさんの部屋で一時間以上、膝を突き合わせてガチンコで話をした。
私は、点滴を少しでも減らして欲しくて、
少しでも体が楽になって欲しくて、
願いである心臓移植へ向けて一歩進めて欲しくて、
仕事したり女の子とデートしたり同じ年代の人が当たり前に行っていることを出来るようになって欲しくて、
隠れて食べるのではなく、堂々と食べて欲しくて、
そして、医療者への不信感を解きたくて、一緒に解決策を見つけたくて必死だった。
Aさんは号泣していた。
その日の夜、Aさんは荒れて部屋を閉めきったり、電源コードを首に巻いたり大変だったらしい。
夜勤スタッフが声をかけても、
「ほっといて!ノンスケさんに全部聞いて!」
と泣きじゃくっていたそうです。
(夜勤さん、ごめんなさい)
翌日、この出来事をきっかけとなり主治医や師長、病棟スタッフのトップが動き、Aさんとさらに深く話をしてもう一度生活改善に取り組んでくれることになった。
おかきはナースに預からせてくれて、一日三個、と約束した。
本当にうれしかった。
余計なお節介だったかもしれないけど。
Aさんは私の顔を見ると恥ずかしそうにして、私に思いを言ってくることはなかった。
私も検温で部屋に行っても深くは聞かなかった。
それでいいと思った。
嫌な思いをさせてしまったかもしれないけど、本気でぶつかったことで、出口を見つけるきっかけとなったなら。
その10日後くらいだったかな。
Aさんは亡くなった。
もう心臓が限界だったんです。
私は今でもあのときの自分の行動は正しかったのか、考えることがある。
もし、あと余命一週間と予測できていたら。
お買い物を見て見ぬふりして、好きなものを好きなだけ食べさせてあげたら良かったんじゃないかって。
もしくは、もっと早くからきちんと向き合っていたら。
心臓への負担がもっと少なくてすんだんじゃないか。
その正しい答えは出ないと思うけど、事例研究を通じてその一連を振り返りたいと思います。
スタバにいたら
隣にいた二人組。
どうやら、1人はドクターでもう1人はナース。
私が勤める病院とわりかしご近所圏内の大学病院の元同僚同士らしく、ドクターは病院を辞め、外国にいる模様。
私の耳は当然ダンボ(笑)
まぁ、ダンボにしなくても席が近いから聞こえるんだけどね。
看護師さんの方は思い悩んだ顔をしていた。
「辞めたい」
と、話していた。
仕事に行けなくなり、1週間休んでいる、と。
1週間かぁ…
復帰には相当な覚悟が必要だし、しばらくは針のむしろだろうな…と心の中で思った。
看護師さんの方は附属の大学を出て、そのままその病院に就職して何年か経っていた。
外に出る勇気がなく、でも、人間関係などの環境が合わなすぎて体調を壊し、くすぶっている様子でした。
ドクターは、大学病院という下手をしなければ守られているけど閉鎖的な環境が合わずに、とっとと辞めたらしい。
辞めて外の世界に出て良かった、元気出せよ、俺は大学病院の環境がダメだったけど、すごいよあの環境でがんばってるんだから、大丈夫だから、と一生懸命彼女を慰めて励ましている。
気付いたら私まで、うんうん、と首を縦にふって頷いていた(笑)
でも、医者と看護師の立場の違いもあるのかな、彼女の反応は今一つ。
ドクターがおかわりを買いに行っているときに、思わず、
「気持ちわかります」
と、突然話しかけてしまった。
…。
話しかけたあとに、ハッとした。
私、思いきり怪しい人…
彼女もビビってました。
そりゃそうだ(笑)
でも、本当に職場の状況や気持ちが手に取るようにわかるんだもん。
自分の経歴や今の勤め先を話したら、彼女の顔が笑顔になった。
辞めても絶対に大丈夫ですから、って伝えた。
もちろん、辞めない選択だっていい。
あのときこうしてれば、って後悔してほしくないと思った。
とにかく、その看護師さんが自分で選んだ選択肢に自信をもって欲しくて、
とにかく、元気になって欲しくて、
見ず知らずの私でしたが、驚かせてごめんなさい。
自信もって欲しい。
日本最高峰の大学に入ることも、その病院に就職することも、簡単じゃない。
それだけでも、立派です。
私には真似できない。
だから、絶対大丈夫。
もしかしたら、またこの私の出没スポットでお会いするかもしれませんね(笑)
そのときは、元気になってて欲しいな。
これから健康診断に行ってきます。
なんかしょっちゅう健診を受けてる気がする。
今回から、健診は特別に一日、有給休暇を使わせてくれることに。
今までは18時間の夜勤明け後に健診に行かされてたので、低血圧・頻脈・血尿・タンパク尿・貧血・脱水、視力も落ちてるし、ぼんやりしてるから聴力検査のボタンを押す反応も悪い。
もちろんデータはボロボロ。
そんな意味のない健診をしてたら、指導が入ったらしい。
そりゃそうだ。
でも、私。
胃透視が嫌で、というか、さっさと健診を終わらせたくて、いつもご飯を食べて行きます。
そうすると受けずに済む!
いつか怒られるかな。
この間の夜勤中、病棟に緊急入院がきました。
急性アルコール中毒の男性。
合コンで飲み過ぎて、わざわざ救急車でやってきたらしいです。
救急外来からの連絡で、「急アル」と聞いた夜勤者一同は舌打ち。
洗面器抱えて水でも飲んどけ、と言いたくなります。
急アルは救急外来でも受け入れを嫌がられます。
忙しいときは、対応は一番後回し。
ビニール袋を握らせて、放置…あ、違う違う、様子観察、がよくあるパターン。
やってきた男性は救外で、お灸を据える意味で、18G(とっても太い針)で末梢ルートを取られ、バルーン(おしっこの管)も挿入。
でもこれはちゃんと理由があり、万が一、何かあった場合は太い針で血管確保してある方が薬をたくさん入れられるしね。
トイレにも行けないような状態なので、きちんと排泄量をカウントするためにはバルーンも必要。
でも、酔っぱらって全く痛がる様子もなかったとか。
病棟では、差額ベッド代が一晩数万かかる個室へ。
もちろん、これにも意味があり、酩酊状態では暴れたり大声出したりするので、大部屋では管理上困難だからです。
点滴もタダじゃない。
ドクターの
「じゃんじゃん入れて」
の指示で、点滴は一晩中全開で次々落とします。
もちろん、アルコールを洗い流すためですよ!
翌日、クリアになったご本人は、自分に繋がってるおしっこの管を見て軽くパニック。
太い針は入れるときも痛いけど、当然抜くときも痛い。
ついでに、請求書を見て無言。
がんばって働いてきっちり払ってね。
救急車一回、8万円。
これ、医療費から支払われます。
そして元はと言えば、税金。
救急車を呼ぶな、とは思わない。
なぜ、救急車を呼ばなかったの、と思う患者さんもいます。
でも、お酒を飲み過ぎてタクシー代わりに使った救急車、その間に本当に必要だった人への助けが遅れてたかもしれない。
急アルの男性に限らず、モラルの低さを感じることがとても多いです。
先月、ケーススタディをやるように言われました。
やれやれ。
やっぱりきたか。
まぁ、そうなるだろうと思って、症例は決めていました。
それに、これは私が教育体制がある病院に来た目的の1つでもあります。
病院にはそれぞれ良い面と、そうではない面がある。
ドクターも看護師も、研究や論文を書きたい人には大学病院や大規模病院は向いてるけど、そうではない人には向かないかな。
私はぶっちゃけ研究とか論文には全く興味はない。
看護師は職業の独占が保証された資格職。
選ばなければ、キャリアなんか気にしなくてもいくらでも仕事はある。
でもやっぱり、どこかで教育を受けた、という軌跡はないよりあった方がいい。
なぜなら、自信にもなるから。
その1つの目安として、私はケーススタディを考えていました。
以前、看護師になったのは稼ぐため、と書きました。(消えちゃったけど
)もう少し深く話すと
私は以前結婚したとき、派遣OLでした。
周りが結婚し始め、
そして派遣という仕事に将来の不安も感じていました。
「若くてちやほやされるうちはいいけれど…」って。
もちろん、前のパートナーに愛情はありましたが、とにかく「結婚」がしたかった。
私は、相手に経済的な依存をするのではなく、
「1人でも生活はできるけど、この人といたいから、結婚したい。何かあったときには、私が稼ぎ頭になれるくらいになりたい。」
そうなれるように、自分を変えようと思いました。
明日からもがんばろっと






