石田明目線を戯曲風で。


【①高架下の居酒屋】

           ※あゆみとの初めて飲んだあと、1人で高架下の居酒屋に来ている石田

石田「すみません、瓶ビール」

店員「はいよ」

          ※言うと同時に瓶ビールがテーブルに置かれる

          ※石田はいつもの癖で、すぐさま瓶ビールを持ち手酌をする

店員「久しぶりですね」

石田「そうですね。ちょっと忙しくて」

石田の心の声「すいません、嘘です。あゆみちゃんに会うために居酒屋行ってたんです。こんなクソ野郎をお許しください」

店員「お食事どうしましょ?」

石田「あ、冷奴と板わさともつ煮込みを」

           ※調理場の大将が半笑いでうなずく

石田の心の声「いつも同じメニューですんません。あっ!そうや!焼き鳥の味見しにきたんやった!」

石田「あ!あと焼鳥盛り合わせを」

店員「はいよ」

          ※調理場の大将が石田の方を見て、ニコッと笑い焼き場へと向かう

石田の心の声「うわ、大将の笑顔初めて見た気がする。MAXがさっきの半笑いやったのに!」

           ※注文したスピードメニュー3品が超スピードで現れる

石田「あざます」

          ※石田は冷奴の上に乗っているきざみ葱を口に放り込む

          ※それを前歯で数回噛み、ビールを口にふくむ。

          ※奥歯で葱を噛みながらビールを流し込むと幸せそうな顔になる石田

石田の心の声「これこれ!やっぱり嘘はあかん。自分に正直にいきなあかんなー」

         ※石田が等身大の飲み方を堪能していると、店員が焼き鳥を持ってくる

店員「はい、串盛り合わせ」

石田「あざます」

         ※美味しそうな焼き鳥に自然と手が伸びる

         ※食べた瞬間

石田「うまっ」

         ※石田は周りを見渡す

石田の心の声「はずっ!1人やのにしゃべってもうた。にしてもうまいなー。これなら絶対にあゆみちゃんも喜んでくれるはずや!」

         ※石田は希望に満ち溢れた目でビールを飲み干す

【②居酒屋の近くの電信柱】

         ※石田は相変わらず刑事の張り込みスタイルで待っている

         ※メールが届きメールを開く

あゆみのメール「おつかれさまです!終わったよ!」

石田の心の声「よっしゃビックリマーク入ってる!嫌われてない証拠ー!」

石田のメール「おつかれさまです。ほな向かいます」

石田の心の声「向かいます!待ち合わせ場所まで徒歩10歩!すぐ行きます!」

          ※石田は浮かれる気持ちを必死に抑えながら10歩で待ち合わせ場所に到着する

          ※石田が待っているとあゆみが現れる

あゆみ「こんばんは!すみません、お待たせしました」

石田「おつかれっすー。僕も今来たとこです」

石田の心の声「本当です。そこの電信柱には30分以上前からいましたけど。ここに来たのはまさになうですー」

石田「いきましょか」

【③高架下の居酒屋】

         ※サラリーマンたちで溢れかえっている店内

          ※石田とあゆみが入ってくる

石田「ふたりいけます?」

店員「いらっしゃー・・!」

          ※驚いている表情の店員と大将

店員「あ、こちらどうぞ」

          ※テーブル席へと案内それるふたり

          ※あゆみがキョロキョロと壁に貼られたメニューを見始める

          ※石田もつられてキョロキョロし始めてしまう

石田の心の声「おれ何してんねん。メニュー決まってるやろ!エスコートせんかい!」

石田「とりあえず生ビール行きます?」

石田の心の声「合わせに行くな!このタイプの居酒屋は瓶ビールやねん。自分に正直生きようって決めたやん」

石田「それとも瓶ビールにします?」 

石田の心の声「委ねるなよー。なんで『瓶ビールにしましょか』って言われへんかねー!」

あゆみ「うわー悩むー。瓶ビール一緒に飲むのもいいなー」

石田の心の声「ほら見てみー!合わせに行ったらあかん!自分らしくや!」

石田「すみませーん。瓶ビールグラス2つでお願いします」

店員「はいよー」

石田の心の声「うわ!ちょっと声大きかったかな?しゃしゃりすぎてひかれてへんかな?」

          ※店員がキンキンに冷えた瓶ビールとグラスを持ってくる

石田「あざます」

         ※と言いつついつもの癖ですぐさま瓶を持ってしまう

石田の心の声「おいおい!手酌すなよ!デートやからなおれ!」

石田「お先にどうぞ」

          ※あゆみがフッと笑いグラスを手に取った

          ※石田が瓶ビールを注ぐ

石田の心の声「2人の初めての共同作業です!さあ、シャッターチャンスですよー!!!」

          ※浮かれながらなのか緊張からなのか泡まみれになるビール

石田の心の声「ビール注ぐのヘタすぎるやろ!1人でばっかり飲んでるからそんなことなるねん!」

           ※あゆみが石田にビールを注ぐ

石田の心の声「めちゃくちゃうまいやん!20歳でこんなにビール注ぐの上手い子おるん!?やっぱり20歳って嘘なんちゃうん!?」

石田「ほな乾杯しましょか」

ふたり「乾杯」

          ※泡とビールの比率が2:8と8:2のグラスがコチンと音を立てる

          ※2人はグビっとビールを飲み

ふたり「うまー」

         ※まさかのシンクロにクスクス笑ってしまうふたり

石田の心の声「めっちゃ恋してるやん!これぞ恋やん!!いいぞいいぞーーー!!!」

石田「なに頼むー?」

あゆみ「えー・・・石田さんチョイスで」

石田の心の声「お任せあれ!予習してきております!!!」

石田「すみませーん、冷奴と板わさともつ煮込みと焼き鳥盛り合わせで」

店員「はいよ」

          ※調理場の大将が満面の笑みでうなずき、焼き場へと向かう

石田の心の声「なんかはずーーーっ!!!バレてるやん!こないだデートの予習したのむき出しでバレてるやん!はずーーーーっ!!!」

          ※スピードメニューが超スピードでやってくる

          ※石田はいつもの癖できざみ葱を救いそうになる

石田の心の声「あかんあかんあかん!自分らしくとは言ったけどそれはさすがにひかれるて!やめとけやめとけ!」

          ※間一髪できざみ葱カミカミビールを止め、板わさに醤油をかける

石田の心の声「やってもうたー!これまたいつも通り大胆にかけてもうたー。ガサツや思われたかな」

          ※石田は自分の行動に自信を持てないまま飲み続けている

          ※「はいよ盛り合わせ」という聞き馴染みのない声が聞こえる

          ※その声の主は普段客席に来ることのない大将だった

石田「あざます」

大将「1本サービスしといたから」

        ※そう言い調理場に戻っていく大将

石田「ありがとうございます」

あゆみ「ありがとうございます。うわー、美味しそー」

石田の心の声「大将ーーーー!!!常連感演出してくれてありがとうございまーーーーす!!!最高ですやん!サービスしくれたのはハツですね。ハツ!?心臓?ハート?大将ーーーー!!!これは恋愛成就の焼き鳥ですねー!!!大将ーーーー!!!おれがんばります!!!」

         ※美味しそうに焼き鳥を食べるあゆみ

         ※石田はあゆみの食べる姿を視界に感じながらビールを飲み干す

         ※時間経過

         ※焼き鳥の皿は空になっている

          ※酔いが回ってきたのか石田は自分が抑制できなくなっている

石田の心の声「あかん、きざみ葱カミカミビールをするあゆみちゃんが見たい。おれが若手の頃からお世話になったきざみ葱カミカミビールを伝授したい。そして一緒にきざみ葱カミカミビールをエンジョイしたい。さっきはあかん思ったけど今なら行ける!いけ!いけ!おれ!!!」

石田「冷奴の最高の食べ方あるねん」

石田の心の声「間違えたー!ビールのうまい飲み方やろ!緊張すなおれ」

あゆみ「なにそれ?どんなん?」

石田の心の声「食いついてるー!よし、冷奴自体は食べへんけど、説明続行!!!」

          ※石田はきざみ葱カミカミビールを実演しながら

石田「上に乗ってる葱を口に入れて前歯で噛む。そのままビールを飲んでもう一回噛む。これがうまいねん」

あゆみ「え!?」

石田の心の声「そうやんなー!冷奴食べへんのかーい!ってなるよなー!!」

あゆみ「やってみていい?」

石田の心の声「おおーーー。バレてない。冷奴という主役がおらんことに気づいない!」

石田「う、うん」

          ※あゆみが丁寧にきざみ葱カミカミビールをやる

石田の心の声「うおーー!あゆみちゃんがきざみ葱カミカミビールやってるー!これ奇跡やわ奇跡!!!」

あゆみ「最高!これだけでビールいっぱい飲める!」

石田の心の声「奇跡続行!!!!」

石田「せやろ!若手の頃お金なかったからようこうやって飲んでて今もやってまうねん」

          ※石田は饒舌になり話を続ける

         ※あゆみの視線に気がつく石田

石田の心の声「え?めっちゃ見られてるやん!なに!?なにー?もしかして歯に葱ついてる!?なにー!なんなーーん!?」







          つづく