石田明目線を戯曲風で。

【①ワインバー】

          ※石田は慣れないワインを飲みながら

石田「今日はいそがしかったんですか?」

あゆみ「ん~まぁ。石田さんは?」

石田「そんな事ないっすよ」

あゆみ「そうなんですね」

          ※ただワインを見つめてしまう時間が流れる

石田の心の声「おいおいおい!盛り下がるまで早すぎるやろ!よっしゃ!メニュー見ておつまみ選びや!これで盛り上げよう!まずは厚揚げとなめろうと・・・!ワインバーに置いてるんけないやろ!おいおい!ワインバーっておつまみ何頼んだらええねん。全然わからんねんけどーー!!!」

あゆみ「私、こういうオシャレなお店初めて来ました!!!!」

石田「へ?」

石田の心の声「今なんとおっしゃりました?こういうオシャレなお店初めて?」

あゆみ「すみません、ワインとかわからなくて」

石田の心の声「ぎゃーーー!!!あからさまな作戦ミスーーーー!!!この世代の子はワイン好きなんちゃうーーん!!?読者モデルのブログ信じたおれがアホやったーーーーー!!!」

あゆみ「せっかくお食事にお時間頂いたのに申し訳ないです」

石田「そうなんやー。意外~」

          ※という声は蚊の羽音くらいであゆみに届いたか届いていないかはわからない

石田の心の声「自白しろおれ!ワインなんかしらんやろ!言うてたやんけ!ワインは中山秀征さんか坂本冬美さんか藤あや子さんにご馳走してもらう時しか飲まへんって!自白せんかい!」

石田「僕も・・・初めてです!!」

あゆみ「はい?」

          ※あゆみの眉間にシワが寄ったような気がした石田は反射的に言葉で空間を埋める

石田「すんません、おれもワイン全然知らないっす。こういう所好きなんかなーと思って張り切って予約してみました」

          ※沈黙がふたりを包む

石田の心の声「オワタか?これオワタやつなんかー?」

         ※石田は不安になりながらもワインを口に運ぶ

          ※あゆみが突然、吹き出して大爆笑する

           ※石田もこの状況がやけに滑稽で、飲んでるワインを吹き出してしまう

          ※錆び付いていたチェーンにKURE556を吹きかけたかのように急に会話が滑らかになるふたり

あゆみ「うそでしょ!?」

石田「いや、ほんまやで」

あゆみ「じゃあさっきのは?」

石田「めっちゃ調べてんけど」

あゆみ「じゃあ本当はどういう所行くの?」

          ※あゆみと石田はずっと半笑い

石田「高架下の居酒屋が好きやねん」

石田の心の声「おい!待て!普通の居酒屋でええやん!なんで高架下まで限定すんねん!この子20歳なったばっかりやぞ!」

あゆみ「一緒じゃん!!!!」

石田の心の声「なんで!?え?20歳なったばっかりで高架下の魅力わかる!?もしかしてサバ読みまくりのパターンですかー!?」

石田「ほんまに!?」

あゆみ「あーもう!めちゃくちゃ背伸びしちゃったじゃんー」

石田「いやいやおれも背伸びしすぎてふくらはぎパンパンやわぁ」

          ※あゆみが笑っている

石田の心の声「あれ?これ初笑かしちゃう?さっきのワイン飲んだことないカミングアウトは笑われただけやから!これ初笑かしやんなー!めちゃくちゃ嬉しいねんけど!!」

          ※あゆみは笑いを堪えながら

あゆみ「てことで???」

石田「生ビール飲みましょか!」

【②とある駅へと向かう道】

          ※ワインバーを出て駅に向かって歩いている石田とあゆみ

石田の心の声「楽しかったなーって余韻に浸るのはまだ早いぞー。これで終わる訳には行かんから次のこと考えろ次のこと!」

石田「あっ!」

          ※石田は高架下を指さし

石田「ここの高架下の居酒屋も好きやねん」

あゆみ「うわー!最高の雰囲気だね!」

石田の心の声「食いついたぞ!誘え!誘えおれ!でも大丈夫か?おれあそこで頼むんもつ煮込みと冷奴と板わさだけやで。でも焼き鳥うまいって噂やからな。まだ食べたことないけど。えー!どうしよー?ここ食べログで見たことないしなー。今の子なんか絶対に食べログの評価見るやろー?どうしよー、とんでもない点数の低さやったらー!でもこの状況さそうしかないよなーー!!!」

          ※駅にたどり着くふたり

石田「来週あたり高架下、行かへん?」

石田の心の声「高架下の居酒屋行かへん?やろ!高架下行かへん?ってなんの誘いやねん!めちゃくちゃやばい奴や思われたらどうすんねん!丁寧にいけおれ!」

あゆみ「うん!是非!」

石田の心の声「ハジマター!あ、これオワターの逆ね!ハジマターーーー!!!おい!待てよ、このまま誘うのもありちゃうん!?アホ!まだ20歳やぞ!あかんに決まってるやろ!でもまだ飲み足りひんのも事実やん!そうやけど!もう1件行こうって今なら言える気がする。言ったらあかん!ここは冷静に大人の男を演じんかい!」

           ※石田は脳内で開かれている会議を強制終了させて

石田「ほなまた!気をつけて」

あゆみ「ご馳走さまでした。ありがとう」

           ※あゆみは改札に入っていく

          ※石田はあゆみが見えなくなるまで手を振り続けた

          ※石田はあゆみが見えなくなった瞬間!ニヤニヤを抑えきれず

石田「・・・下見しとくか」

          ※高架下の居酒屋に入っていく石田





                     つづく