石田明目線を戯曲風で。
【①公園】
※寒さは限界だが、心だけはホクホクの状態で電話をしている石田
石田「そうなんすねー。あっ、そうや!今何歳なんですか?」
あゆみ「ハタチです」
石田「え?」
あゆみ「1月10日でハタチになりました」
石田「お、あ、そうなんやー。へー」
石田の心の声「まじかー!?て、ことはおれが一目惚れした時は19歳ってこと!?まじか!?大丈夫か!?一回り下の子を食事に誘ってええんか?これ軽犯罪ちゃう?大丈夫か!?」
あゆみ「どうかしました?」
石田「いや、別に!僕2月20日なんで似てますねー」
あゆみ「似てる?あっ、そうですねー」
※明らかにあゆみは苦笑している
※石田が時計を見ると朝の4時前
石田「あ、もう朝ですねー」
あゆみ「そうですね」
※なんとも言えない空気がふたりを包む
石田の心の声「ほら!食事誘え!食事誘わんかいおれ!こんだけ話したんやから大丈夫や!食事さそったれーーーー!!」
あゆみ「あのー、この間お食事誘ってもらったじゃないですか?石田さんともっと話してみたいとは思うんですが忙しそうだしお礼なんかは気にしないでください」
石田の心の声「オワター!嘘やん!この長時間話した電話はなに!?長く助走をとった方がより遠くに飛べるって聞いたってミスチルが歌ってたよー!めちゃくちゃ助走とったのに踏み込む地点に落とし穴状態なんですけどーー!ぎゃーーー!!!なにこれ!?ゲームオーバー!?ゲームオーバーなん!?」
※石田の心はパニックになっているが体は完全にフリーズしている
あゆみ「・・・おやすみなさい」
石田の心の声「なんでやねん!もう強制終了しにかかってるやん!あかんあかん!なんとか食い止めな電話切られる!てことはチャンスなくなる!なんでもいいから話しかけろおれー!」
石田「あの!!」
あゆみ「は、はい!」
石田「敬語やめませんか?」
石田の心の声「芸人辞めてしまえ!それ開始そうそうにやる会話やねん!なにを終盤でぶち込んでるねん!このへたくそー!」
あゆみ「え?あ、はい。あ、うん」
石田の心の声「困ってるやん。困らせんなよ。一回り下の女の子を!てか、そんなんどうでもええねん!食事食事!食事の件リターンもとむ!」
石田「あのー!!」
あゆみ「なに?」
石田の心の声「タメ口!?順応力いかつー!これが若さってやつかー!ひるむなおれ!」
石田「明日仕事終わったあと、飯でもどないですか?」
石田の心の声「ガッカリやわ。普通に敬語やん!自分から言い出しといてなんやねん!」
あゆみ「・・・うん、行こか?」
石田「やっぱ下手やなぁ」
※2人で笑い合う
※余裕ぶってはいるが心の中はパニックの石田
石田の心の声「え?え!?行けんの?やば。どうしよー!急展開すぎて!ていうか!一回り下の子ってどんなお店行くのー!?」
※石田は平静を装いポーカーフェイスならぬポーカーボイスで
石田「ほなまた」
あゆみ「はーい。おやすみなさーい」
※石田は電話を切る。携帯を見ると4時を超えている
※寒さが急激に押し寄せ震える石田
石田「さっぶっ」
※無意識のうちに公園の地面に「あゆみ」と書いてしまっている事に気がつく
石田「こっちの方が、さっぶっ!」
※石田は自分につっこみつつもニヤニヤが止められない
【②とある楽屋】
※翌日の昼、石田はパソコンとにらめっこしている
※井上は鏡にうつる自分と見つめ合っている
石田の心の声「かー!若い子ってどんなお店がええんか全然わからんなー。こいつに聞いたらたぶん知ってるんやろうなー」
※前髪の微調整に余念がない井上
石田「腹立つなー。こいつに借り作るんも嫌やしなー。でもまじでどういうところがいいんやろー?」
※石田は読者モデルのSNSをチェックし始める
石田の心の声「んー・・・やっぱりワインか。ワインやな。読者モデルはなにかとワイン飲んでるもんな。よし!ワインや!でもワインの店なんか知らんなー」
※石田はワインの飲める店を検索し始める
※井上の前髪の微調整はまだ続いている
【③居酒屋の近くの電信柱】
※夜、石田はまるで張り込みの刑事のように電信柱にはりついている
※なにをしているかと言うと絶賛ワインについてのウンチクを調べて丸暗記しようとしている
石田「ピノ・ノワール、あまりにも華やかな赤ワイン界の女王様。カベルネ・ソーヴィニヨン、すべての要素を兼ね備えた絶対王者。シラー、やんちゃ感溢れる南国のスパイシー娘」
※まったく意味の分からないことをブツブツと繰り返す石田
※石田は時計を見る
石田「・・・やっべ。もうこんな時間や」
※そこに石田の携帯電話がなる
※ディスプレイには「あゆみちゃん」の文字
※石田が急いでメールを開くと
あゆみのメール「終わったよ」
石田の心の声「終わったという始まりの合図きたーーー!!」
※石田は深呼吸をしてメールをうつ
石田のメール「おつかれさん」
あゆみのメール「どこで待ち合わせる?」
石田の心の声「よし!よし!その質問は想定内!」
石田のメール「お店の奥のパチンコ屋の裏で」
あゆみのメール「はい。今から行くね」
石田の心の声「いつでもおいでなさいませー!ぼくはその待ち合わせ場所の最寄りの電信柱で待機しもりますー!」
※石田が電信柱の影に隠れているとあゆみが現れる
石田の心の声「おいおいおい!今日はいつもにも増してかわいくないか!?」
※あゆみは周りを見渡してから、携帯をいじり始める
※石田はあたかも今来たかのように装いあゆみの前に姿を現す
石田「おつかれさまですー」
あゆみ「あ、おつかれさまです!」
石田「行きましょか」
あゆみ「あ、はい」
石田の心の声「完全にミスったーーー!!!一発目敬語でいってまうという絶対にやったらあかんやつーーー!!すごろくで言うたら振り出しに戻るーーーーー!!!」
※石田は足早に店に向かう
※あゆみは石田の背中を無言で追いかける
石田の心の声「あかんあかん!早くお酒でも飲んでタメ口に戻さな!急げ急げ!」
※石田は小洒落たワインバーの前で足を止める
石田「今日、ここやねんけどいい?」
あゆみ「あ、はい」
石田の心の声「よし!店入ったら取り返すぞー!がんばれよおれ!!!」
【④ワインバーの店内】
※席に座っている石田とあゆみ
あゆみ「石田さん、普段こういう店よく来るんですか?」
石田「ん?ま、まあ、たまにね」
※そこに店員が現れる
店員「失礼いたします。お飲み物はお決まりでしょうか」
石田「あ、生で。あ、いや、あの、ピノ・ノワールあります?」
店員「ご用意ございます」
石田の心の声「あっぶねー!ついついクセで生って言うてもうたー」
石田「じゃあそれを」
店員「ピノ・ノワールの何になさいましょう」
石田「え?」
石田の心の声「え?なに?もしかしてピノ・ノワールってジャンル?まじか!どうしようー!!!」
石田「ラ、ライトめなやつを」
店員「かしこまりました」
石田の心の声「たえたーー!」
石田「あゆみちゃんは?」
あゆみ「私もそれを」
石田「じゃあグラス二つで」
※言った瞬間テーブルの上のグラスに目が行く石田
石田の心の声「あるある!1人につきグラスが必要以上にある!!」
店員「・・・かしこまりました」
石田の心の声「察したよね?店員さん今のでおれがしったか全開て気づいたよね!?お願いします!全力でフォローー!!」
あゆみ「ワイン詳しいんですか?」
石田「いや、詳しいわけではないけど、まあ、ちょっと知ってるくらい」
石田の心の声「まあ一夜漬けやけどね!」
あゆみ「そうなんですねぇ」
※店員、ワインを持って現れる
店員「お客様、こちらでよろしいでしょうか」
石田「よろしいですね」
石田の心の声「なんやその返事!アホばれるから!慎重にいけおれ!」
※店員がワインを開け始める
石田の心の声「おいおい開けてからこいよ。なにコルク臭ってんねん。おいおい!おれからついでどうすんねん!そこはレディーファーストやろ!・・・で、あゆみちゃんに全然つがへんよん!なにしてんねん、乾杯できへんやないかい!」
店員「お客様?テイスティングを」
石田「え?あ、あー!」
石田の心の声「あっぶねぇ。確かにそんなんネットに書いてたなー!危うく全力でつっこんでまつとこやったわ。えーと、確か。回す。匂う。一口飲む」
※石田はネットに書かれていた情報を思い出しながら実行する
石田の心の声「そして」
石田「大丈夫です」
店員「ありがとうございます」
石田の心の声「決まった~!ヤフーさんありがとう」
あゆみ「じゃあ乾杯しよっか」
石田「あ、そうやね。じゃあ乾杯」
あゆみ「乾杯」
※二人はワインを飲む
石田「うん、美味しい」
あゆみ「飲みやすいですね」
石田「そうやね」
※石田とあゆみが笑顔で会話している中
石田の心の声「生ビール飲みてぇ。汚ない居酒屋行きてぇ。くそ~。ていうかフォークどっち側からやっけ?さっきのワイン高いんかなぁ。そんな手持ちやいねんけど。あかん。デートに全然集中できひん。このまま嘘をつきとおすんか。それともほんまの自分を出すんか。うおーーーっ!どうすばええねんおれ!」
つづく