石田明からの目線を戯曲風で。


【①マンションの部屋のリビング】

          ※水槽で飼われているオカヤドカリに話しかけている石田

石田「無理やわ。もうあれから何日も通ってるけど、仲良くなれる気配ゼロ(カップ酒を飲む)。ていうかそもそも気づかてへんし。どうしたらええねーん。」

          ※何気なくスマホを見ると「12月23日」と書かれている

石田「明日か・・・渡されへんよなー」

          ※石田の視線の先にはブランケットの紙袋

          ※石田、なにかをひらめく

石田「ちょっと待てよ。明日はクリスマスイブやろ?働いてる時点で彼氏おらんってことやんな!?そうやんな!?で、明日店におらんかったらその時は・・・諦めろってことやん。な?

オカヤドカリは石田を励ますように、木に登っている

【②居酒屋の前】

          ※プレゼントをどう渡そうかシュミレーションしながら店の前に到着した石田

          ※1番のお気に入りの赤のライダースジャケットに黒のスキニーに身をまとっている

          ※ブランケットの入った紙袋を持った石田は入り口の前で気合いをいれる

石田の心の声「店におれば天国、おらんかったら地獄、地獄の場合はそのままやけ酒。よし」

           ※石田はドアに手をかけた

【③居酒屋】

           ※入り口を開けるとあゆみの笑顔が

石田の心の声「きたーっ!おったー!!天国へ、いらっしゃーい」

          ※しかし、お店はかなり繁盛していてあゆみは石田が来てることに気が付かない

石田の心の声「おーい!おーーーーい!石田来たでー。あゆみちゃーーーん!」

          ※すると男性客が石田に気が付き

男性客「あゆみちゃん、お客さんだよ!」

石田の心の声「くーーっ!おれも早くあゆみちゃんって呼んでみたいなーーーー!」

          ※あゆみが振り返り

あゆみ「いらっしゃいませー、何名」

          ※石田は脊髄反射のごとく、人差し指を立て「1名様アピール」をしてしまう

         ※あゆみは石田の顔を見て、服装を見て、さらに顔を見て

あゆみ「あ、こんばんは。こちらにどうぞ」

         ※あゆみは石田を席に案内する

石田の心の声「え?なに?今の間?え?今日おれ服すべってる?・・・やっば!おれクリスマスに赤の服着てもうてるやん!はっず!!はっず!!」

あゆみ「お荷物、お預かりしておきましょうか?」

石田「あ、いいんすか?すんません、お願いします」

          ※石田は紙袋をあゆみに渡す

石田の心の声「このまま受け取ってくれーー!!それあなたのですから!!」

         ※石田は無性にソワソワしている

あゆみ「生ビールでいいですか?」

石田「あ、はい。すんません。ありがとうございます」

          ※あゆみは紙袋を荷物置き場に置き生ビールを入れる

石田の心の声「お!そのまま忘れて帰る作戦もありやな。で、お店に電話して「それはあゆみさんへとプレゼントです」的な!?ありちゃうん!?ありちゃうん!?」

あゆみ「あいよ、生」

          ※生ビールを置いて去っていくあゆみ。そのあゆみをチラチラ見てしまう石田。

          ※石田は「今日は絶対に話す」作戦としてパソコンを持ってこないでいた。だからか無性に手持ち無沙汰でビールのペースが上がってしまう

女性客「あゆみー!ケーキ食べたーい!」

石田の心の声「あゆみ?誰だ、そんな馴れ馴れしいのは?」

          ※石田が声の方を見るとカウンターで1人、想像を絶するギャルが座っている

         ※あゆみととても仲良さそうに喋っているギャル

石田の心の声「ん?友達?えっと、あゆみさんってそっちのタイプの人ですか?え?え?」

         ※石田はあゆみたちの会話に耳を傾けるが、居酒屋の賑わいっぷりにたまにしか聞こえない

ギャル「・・・彼氏が・・・」

あゆみ「・・・私の彼氏はイケメン・・・」

          ※キャッキャ笑いながら楽しそうなあゆみとギャル

石田の心の声「オワタ。完全にオワタ。そら彼氏おるよなー。そらイケメンよなー」

          ※石田は絶望

          ※石田はあゆみを眺めて

石田の心の声「今までありがとう。楽しかったよ。ドキドキさせてくれてありがとうね」

          ※あゆみは石田の視線に気が付き、石田の元へ来る

あゆみ「石田さん、ケーキ食べます?」

石田「え?ケーキっすか!?あ、はい。いただきます!」

          ※石田は豪快にケーキに食らいつく

石田の心の声「な、名前覚えてくれてたんですか!?石田さんって!あなたの脳みそにインプットしてくれてたんですか!?」

          ※石田は舞い上がり過ぎて、なにかしら話しているあゆみの声は聞こえていない

石田「嬉しいっす!ありがとうございます!」

あゆみ「お酒、おかわり持ってきます」

石田「あ、このあと予定あるんで今日は帰ります」

石田の心の声「嘘です。予定なんてなにもありません。もういい思い出のまま帰らせてもらいます。紙袋、置いていくんで使ってくださいね」

          ※石田がお会計を済ませていると、あゆみが紙袋を持ってきて

あゆみ「今日、めちゃくちゃ大荷物ですね」

石田の心の声「戻ってきたーーーー!!!置いて帰ろう作戦失敗!!!こうなったら仕方ない。直接言おう。『最初で最後のクリスマスプレゼントです。さようなら』よし!石田明いけーーー!!!!」

石田「あ、はい。今日これからパーティーなんで」

石田の心の声「この根性なしーーーー!!!この世界入ってパーティーなんか行ったことないやろーーーー!!!」



【④マンションの部屋のリビング】

          ※ヤドカリの水槽の前でうつろな石田がロードを歌っている

石田「♪なんでもないようなことが幸せだったと思う なんでもない夜のこと二度とは戻れない夜♪」
梶剛「これは完全に壊れたな」

          ※梶剛が、ふとカレンダーを見る。カレンダーの1月20日のところに単独ライブと書かれている

梶剛「大丈夫か」
石田「・・・」

つづく






ほいでは。