宿はなかなか見つからなかった。4件目でやっと部屋がとれた。きぬやカプセルホテル204号室。おばちゃんに家出と間違われたが否定はしなかった。予約だけして東京駅に向かった。最高裁判所があった。警視庁があった。日本の中心と思わせぶりな建物がいっぱいあった。都会だと思った。いや、都会だ。

僕は歩いた。いろいろな芸能プロダクションをまわるつもりで、デビューという雑誌についている履歴書の準備もばっちりだ。さあ行こう!僕の辞書に勇気という文字はなかった。単なる芸能プロダクション巡りになってしまった。情けなさが目に染みる。こんなに歩いたのは、高校の遠足以来だった。あの時はいじめられてたなぁ。やばい!ダメなスイッチがはいってしまった。

ホテルに帰って反省会をした。へこむ一方だった。やってられない。風呂に入った。やけにシャンプーが目に染みた気がする。久々に歩いたのは僕は8時には寝ていた。就職する夢を見た。

目覚めた。昨日歩きすぎたせいか、凄まじい筋肉痛に襲われた。電車という乗り物に興味がわいた。いや、助けを求めた。いや、すがりついた。


つづく