↓過去の記事はこちら↓

第1話

第2話

第3話

 

------これまでのあらすじ------

学校から帰って来るなり、
今度学校で友達と
コントをやることになったので
「コントの作り方を教えて」
と言う小2の娘…


-------前回のつづき-------


やばい、
娘が混乱しかしていない。


「とにかく今の話は
 ちょっと置いといて
 なんとなーく
 何か思いついたこととか
 あるかな?」

「うーん…」


曲がっている。

娘の首がものすごく
横に曲がっている。

そらそうか。
小2で急に
コントの設定出せと言われても
難しい。

「そうだよね、急に言われても
 わかんな…」

「スプーンとおはし」

「え?」

「スプーンとおはし、かな」

「…が?」

「ケンカするの。
 こっちの方が便利だよー、って」


せ、成立している!


「うんうん、ケンカね
 いいよいいよ
 まず、それはどこで
 ケンカしたらいいかな?」

「どこって?」

「例えば…出来たら
 おはしもスプーンも一緒に
 使うような場面がいいよね?
 なんかないかなー
 おはしもスプーンも
 使うような食べ物…
 ほら、うどん じゃなくて
 そば じゃ な く て …
 えーと…」

「あっ!ラーメン!」

「あ!それいいねええ!
 ラーメン屋さん!
 じゃあ『れんげ』とおはしが
 ケンカするのかな」

「うん!
 れんげとおはしがケンカする!
 ラーメンの鉢の中で!」

「そうだね!
 で、おはしとれんげが
 こっちが便利!って揉めてて、
 おはしはどんなこと言うかな?」

「『お前、麺つかめるか?
 無理だろ!』って」

「うんうん!」

「でー、
 れんげは… うーん、うーん?」

「(小さい声)スープ…」

「あ!
 『お前スープ飲めねえじゃんかよ!』
 って言う!」

「いいね!そしたらおはしが
 『こうやってすくえるわ!』って
 おはしで必死に何回もすくって?」

「れんげが
 『いや、すくえてないじゃん!』
 って言うー!」



天才か…

ここにいたか天才が…


できそう。
ここにボケ入れていったら
なんとかできそうだ。
でもこれ以上
子供のコントに大人が
口を出してはいけない。

ここからは
娘の相方のAちゃんと
8歳ならではの感覚で
作ってもらおう。

きっと大人が考えるより
面白いものが
出来るに違いない。

「おもしろいの
 できそうだねー」

「うん!! 
 これで明日学校で
 Aちゃんと作ってみる!!
 ママありがとう!」

「楽しみにしてるねー」


娘よ、あなたなら大丈夫。

パパの仕事柄、劇場で
何度も生の笑いを見ているし
ママの仕事柄、
毎日バラエティを見て、
知らない内にある程度の
笑いの基礎は身について
来ているはず。

なんといっても
あなたには、まあまあ濃い
お笑いの血が流れている。

そうだ、
あれは
あなたが4歳の時でした。

ママは初めて
乗りつっこみを
教えたんだった。

ちょっと早いかな?
と思いつつもやらせてみた。

だけどあなたは
私の心配を余所に
見事に
「そーそー、これがおいちいのよ
 …ってこれ空っぽやないか!」
と、
「おやつどうぞ」とママが
出したお皿を一回
ちゃんとかじってから
つっこんだ!!

あの時の感動ったら。

そう、あなたなら出来る。

がんばれ!


そして次の日、
学校から帰って来た娘は
ランドセルを置くなり
嬉しそうに言った。

「ママ!コント決まったよ!」

「早いね!すごい!
 どうなったのかなー?」

「じゃあ、ちょっとやってみるね!
 見てね!」

「じゃあ、見せてもらおうかな!」

いそいそと布巾で手をふき
娘の前に体育座り。

瑞々しい8歳の感性は
あの設定をどう仕上げたのだろう。
ドキドキしてきた。
楽しみだ。


「じゃあ、いくよ!
 コント!ロボット!」


ロボット?

あれ?


動揺する母には目もくれず
娘は完全にロボットになりきった
歩き方で登場。

「ガシャーンガシャーン
 ガシャーン!!
 イマカラ、バクハツシマス!!

 (Aちゃんのセリフ:「え~!」)

 3、2、1・・・

 (Aちゃん:「キャー!」)」


・・・


「・・・ハッピーバースデー!!
 (両手を広げてポーズ)」


・・・


「・・・終わり!
 ぎゃはははは!!」



あれ?


上を向いて、

あれれ?


振り返って、

・・・あっれーーー?



おっかしいなー???



れんげとおはし
どこ行った?

もしかしてどこかで
出て来てたの見落とした?

あれ?
笑いを職業とする
修士くんと私の娘で、
生のお笑いを見て
えーと
4歳の時から
乗りつっこみの…


ハッピーバースデー?


何?

サプライズってこと?

え?

おもしろいの?これ?

え?

めっちゃ笑ってるし…



「ちょっとこっちおいで」

「ふふふ、ママおもしろかった?」

「うん、ちょっとその前にさ
 この前言ってた設定と
 随分違うけど
 どうしたのかなー?」

「あー…
 あれはやめた
 ウケなさそうだから…」

ほーう

「それで
 これ思いついたから
 Aちゃんに言ったら
 『いいよ!』って言うから
 これにしたの!」

相方がイエスマンのタイプか…


「おもしろくなかった…?」

「お」

「…」

「おもし」

「…」

「おもしろいよ」


途中吐きそうになりつつも
私の中の母が勝った瞬間。


「ほんと?良かった!
 実は2も考えてるんだ!
 練習頑張るね!」

練習なんかいらんやろ!
2もあるんかい!

「そっか、頑張れ~」


悶絶!!


結局みんなのやる気がなく
金曜日にまで延期になったという
娘の初コント!一体どうなる?
私はそれまで母を保てるのか!



     -----------次回に続く----------