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---------これまでのあらすじ-----------

学校から帰って来るなり、
今度学校で友達と
コントをやることになったので
「コントの作り方を教えて」
と言う小2の娘…

本番は金曜日。

お風呂の中で突然
長いネタを作ると言い出した娘。


--------前回のつづき-------------

お風呂に響く娘の声。

「えっとね
 ドラえもんのコントにする」

「おお~!いいね~!
 みんな知ってるし!」


まあ正直…

今までお笑い界が
擦りに擦って
摩耗して煙出て
年中意味なく走り回っている
小4男子の靴の底くらい
ペラペラに
すり減ってる設定だが

8歳のかわいい娘に
それは言うまい!

初心者には最も作りやすい
設定の一つだし
小2にはぴったりかも。

やるな娘!

ノリノリの娘は興奮して
続ける。

「えっとじゃあ~ 
 私がドラえもんでー
 Aちゃん(相方)が
 しずかちゃん!」

「しずかちゃん?
 そこはのび太くんの方が
 コントとして
 わかりやすいんじゃない?」

という私のアドバイスに

「え?え?
 なんで?
 Aちゃん女の子なのに
 男の子の役なんて
 おかしいじゃん!(笑)」

よくわからん小2女子ルール!

じゃあお前はいいんかい。
ドラえもんでいいんかい。
男でロボットでネコ型でも
ええんかい。

っていうか、
また設定ロボットやん!

ロボット好きやな!

あれか!

コントの設定偏るタイプか!

苦労するぞ!


ダメ!
また子供のコントに
大人が口出しするところだった。

ドラえもん設定と聞くと、
当たり前のように
ドラえもん&のび太くんが
いいと思ってしまう、
これこそが頭の凝り固まった
昭和生まれの古い
コント作りなのではないか!!

そうだ、
別になんだっていいのだ。

しずかちゃんでいいのだ!


「それでねママ、
 まずドラえもんがいるでしょ。
 そこにしずかちゃんが
 泣きながら来るの。

 『ドラえもん助けて~
  またジャイアンが
  のび太さんをいじめてるの~』」


それやったら
のび太くんでええやん!

なんかややこしいやん!

一個、手間やん!

色々飲みこんで
水滴のついた壁を凝視している私に
娘は生き生きと
ドラえもんとしずかちゃんの
声色を使い
一人で二役をこなす。

*以下、
ドラえもん⇒ド
しずかちゃん⇒し


ド『なんだって!
  よーしわかった!
 (ポケットをゴソゴソ)
  テッテレッテレッテッテー
  富士山~』


私(富士山?
  一個目のボケ、富士山?)


ド『しずかちゃん、
  これを富士山のとこに置くんだ』

し『え!そしたらどうなるの?』

ド『どうもならないよ』


私(!)


し『じゃあいらない!他の出して!』

ド『わかった!
  テッテレッテテッテッテ~
  エベレスト~』


私(なぜ山をかぶせる!)


し『エベレスト出してどうするの?』

ド『どうもならない』


私(言い切るなぁ、ドラえもん!)


し『もう~早く~!』

ド『じゃあこれだ!
  テッテレ~
  お風呂~』

し『今入りたくない!』

私(えっ 
  ここにきて普通のボケ?
  急にしずかちゃんに
  寄せて来たん?
  ここからは普通に行くってこと?)

ド『テッテレ~
  お風呂~』

し『2個もいらない!』

ド『テッテレ~
  お風呂~』

し『また?』

ド『テッテレ~
  お風呂~』

し『また?』

ド『テッテレ~
  お風呂~』

し『また?』

ド『テッテレ~
  お風呂~』

し『また?』


私(あれあれ おかしいな
  意識が遠のきそうです)


ド『テッテレ~
  エベレスト』

し『今エベレスト出たね』

ド『テッテレ~
  お風呂~(小さい声で)』

し『また?
  お風呂ばっかり』

ド『テッテレ~
  お風呂~(ささやき声で)』

し『コラー
  だんだんお風呂が小さくなってるよ!』



おぉ


これが…


これが平成18年生まれの
新感覚コントか…

眩しいのう。

目が開かん。

そして、
気持ちが良いほど
さっぱりわからんわい。

とりあえず
そのドラえもんが出した
小さいお風呂を小堀の
後頭部に思い切り
ぶつけたい気分!


し『もう!ちゃんとジャイアンを
  やっつけるもの出してよ!』

ド『じゃあ最後!
  テッテレ―
  しずかちゃんのパンツ~』

し『この変態』


娘「ぎゃはは!おわり~!」


まさかの下ネタ終わり。


「どうかな~?ママどう思う?」


きっとアインシュタインとか
ピタゴラスのオカンも
最初はこんな顔して
息子の話を聞いていたに違いない。

微妙に愛想笑い。

うんうん~
お母さんはようわからんけど
あんたがそう言うんやったら
そうちゃうかなー、
という母の顔。

「よしっ、でーきた!」

薄く笑ったまま凝固する母を残し、
さっと風呂を上がる娘。


なんかよくわからんけど
なんかよくわからんから
もしかしたら天才かもしれない!


そう思うことにして
私もタオルを取った。

その後、麦茶を飲む娘に
「忘れないうちに
 さっきのコントをノートに
 書いて、明日学校でAちゃんと
 ネタ合わせしたら?」
と薦めると、

「そんなの学校に持って行ったら
 コントの練習してるって
 皆にバレちゃうじゃん!
 だから折り紙の裏に書いて行って
 折り紙するフリしながら
 練習するの」

ヤバい商談並みの偽装工作!

思いもつかない偽装方法!

やっぱりよくわからん小2女子心!

しかし
とりあえずネタは出来た(らしい)!
これでやっとスタートラインだ
頑張れ娘!



しかし、
その次の日。

娘はがっくりと肩を落として
帰宅した。


------------つづく------------------