気になる。
めちゃくちゃ、気になるんだけど。
最近は、メニューにないサンドやサイドメニューを出してくれることもあって。
その『ちょっとしたトクベツ』は、常連であるマミー達にも振る舞われているのかもしれないけれど、ひょっとしたらオレだけ?なんて淡い期待を抱えるにはもってこいな待遇だったから。
だから。
さっきの人は誰?って『トクベツ』なオレになら話してくれるんじゃないかとも思うんだけど。
明らかに『触れないで』って彼女の顔にそう書いてあるから。
切り出せずにいる。
「おに、上司がさ・・・」
「・・・おに?」
どうにか沈黙を破りたくて、思いつくまま口を開いたら・・・。
「うん、鬼なんだ。オレの上司。確かに仕事はできるんだけどね、半端なく妥協しないヒトなんだ」
なんだって、よりによって上司の愚痴?
なにやってんだ、オレ。
「書類の提出期限もタイトだし、ダメ出しの嵐だし。オレ結構優秀な社員だと思ってたんだけど、小僧扱いでさ」
いや、したいのはそんな情けないオレの暴露話じゃないんだけど。
でも。
彼女が、彼女の表情がふっとほどけたから。
つい加速して、ダメっぷりを披露してしまった。
「・・・なんか、情けない話」
自己嫌悪で肩も視線も落としてしまう。
「きっと期待されてるんだよ。理解できない人に、ハードルを上げるような仕事は振らないと思うよ?」
「・・・そ、っかな」
「うん。コウヘイくん、ちゃんと汲み取って結果出そうとしてるでしょ?きっと、すごく優秀なんだね。」
やべ。
今の笑顔、めっちゃストライクだ。
胸の真ん中が、フルフルと震える。
なんだこの感じ。
ずっとずっと昔に味わったような、恥ずかしくなるくらい淡くてやわらかい感じ。
「・・・す、」
無意識について出た言葉にハッとして、口をつぐむ。
さっきの光景がフラッシュバックしたから。
今ここで、言うタイミングじゃないって、現実に引き戻される。
「す?」
「すーぷ・・・。うん、このスープ、めちゃ美味しい!」
視線の端に捉えたかぼちゃのポタージュを指して、とっさに続ける。
「・・・ありがとう」
静かにお礼を言う彼女の、一瞬伏せたまつ毛に。
ゆるりとあがった口角に浮かぶ微笑みに。
それからカウンター越しに、重なった瞳に。
理屈じゃない想いがあふれ出してくる。
オレ。
どうしようもなくカナさんが好きだ。
~~~続く。~~~