(…敦賀さん、信じられない！何が我が儘
よっ！清らガールからかって何が楽しい
の！)
バスタブに寝そべりながら怒る
キョーコ。
(…恋人かあ。敦賀さんの…/////)
また、蓮の全裸の後ろ姿を思い出して
しまう。
(…やだ////逞しくて…引き締まっていて
…きゅああああ。)
キョーコはそろりと和室に向かう。
蓮はもう、布団に入って眠っていた。
キョーコがゆっくり入浴していた
からだ。
(…あ、やっぱり)
布団は210㎝で大抵の人は首まで
引き揚げるので、身長180㎝以上
の人は長さが足りない。
足が出てしまうのだ。
蓮はかなり、足が出ていて寒そう
だ。
「うーん、掛け布団もう一枚
頼まなきゃ。」
「いい。キョーコちゃんが暖めて。」
くぐもった声で蓮はキョーコに
手を伸ばしてきた。
「敦賀さん、最上ですよ。キョーコ
ちゃんさんじゃないですよ？」
「最上さんはキョーコちゃんだよ。」
呟く蓮。口調が妙に子供っぽい。
「敦賀さん、人違いですよ。」
「キョーコちゃん、コーンって
呼んで。」
「え？」
「もう、眠ろう。愛してるよ。」
蓮はキョーコの唇に軽くキスした。
「ええっ//////」
蓮はキョーコを抱き締めたまま
眠ってしまった。
「敦賀さん/////」
キョーコは一睡もできなかった。
しっかり抱き締められ、身動きが
とれず、浴衣越しの密着状態で一晩を
過ごした。
その上、『最上さんはキョーコちゃん
だよ。』『コーンって呼んで』
『愛してるよ』
寝言とは言え、聞き過ごせない
ワードの数々。
交際を申し込まれたことはあるが
愛してると面と向かって言われたのは
初めてだ。蓮は勿論のこと男性から
言われたことがない。
(…キスまでしたら、私のこと好き
なのかなって勘違いしちゃいますよ。)
キョーコは起きようと身体を
動かし、もがく。
「ん…あれ？最上さん？」
蓮が目にしたのは自分に覆い被
さっているキョーコの姿。
「これはまた…大胆な/////」
「キャー、違います！敦賀さんが
抱き締めて眠ったから。」
「浴衣から……胸が見えている。」
「えっ？キャー/////」
キョーコは蓮から離れ、浴衣をかき
あわせた。
「一緒に入ろうか？」
「えっ？」
キョーコは蓮に唐突に言われて
聞き返す。
「お互いの裸見ちゃったし、一緒に
露天風呂に入って朝日を見ようか？」
「なっ/////破廉恥過ぎます。」
「タオルを巻こうか？取ってくる
よ。」
蓮の言葉にキョーコは拒絶できな
い。相手は長年の想い人なのだ。
蓮はタオルとバスローブを持って
きた。
「綺麗ですね/////」
キョーコは蓮と並んで朝日を
眺めていた。
「うん…綺麗だ。」
蓮が見ていたのはキョーコの
露な白い素肌だった。
「ふふ、敦賀さんと露天風呂に入った
なんて知れたら世界中のファンの人に
殺されちゃいますね。」
「大袈裟だな。俺も最上さんのファン
に殺されるのかな。」
「大丈夫です！『地味で色気がない
素うどん』に男性ファンはいません
から！」
微笑むキョーコに蓮は驚い た。
「まだ、そんなこと思ってたの？
世界で美しい顔100に３年連続で入っ
てるのに？」
「私は変わってないですよ？だと
したらプリンセスローザ様の魔法で
す。」
蓮は溜め息をついた。
不破の暗示は本当に効いている。
彼はおしゃれをしないキョーコを
揶揄して言ったのだ。
ファッションにうるさそうな奴だ
から。
可愛くないとは言っていない。
不破が世界的に有名な歌手になって
よかった。アカトキは彼が40歳になる
まで結婚させないと明言してるらしい。
とてもいい。他の馬の骨の駆除は
ぬかりない。
「そう。最上さんは昔から綺麗だ
よ。」
「敦賀さん/////」
切れ長の眼差しに見つめられ、
キョーコは胸の鼓動が高鳴る。
慌てて檜の浴槽から出ようとする。
「待って！３年前のプロポーズは
有効だよ。」
第8話に続く