敦賀さんの想い人は知っている。
でも、この人は誰？
『泥中の蓮』撮影中のキョーコは情報番組
など見る時間はなく、朝比奈たちと突然
そのニュースを見た。
「うわっ、敦賀さん、いきなり年上！？
意外すぎるわー。」
朝比奈は驚く。
「朝比奈さん、遅っ。一週間この話題
だよ。○フレか本命か語れよ敦賀蓮っ
て。」
別の女優が得意気に話す。
「京子ちゃん、同じ事務所だよね。
二人はお付き合いしてるの？」
朝比奈から訊ねられ、キョーコは
首を横に振った。
「大先輩のことは私には…」
キョーコは微笑んだが、顔がひきつっ
た。
(…やだ、涙が出そう。早くここから立ち
去りたい。)
「京子ちゃん、何、油売ってるんだよ。
出番だよ。」
「あ、はい。古賀さん、すぐいきま
す。」
キョーコは古賀を追いかけた。
「ああいうゴシップニュースはいち
いち気にするな。」
古賀はポツリと言った。
「古賀さん…」
キョーコは涙を溜めた目で古賀を
見上げた。
「止めてくれ。そんな可愛い目で見つ
められたらムラムラくるだろ。あ、
どうせならナツで迫ってくれる？」
古賀の軽口にキョーコはクスッと
笑った。
「やだ、古賀さんったら。私なんか
タイプじゃないくせに。」
「敦賀くんを諦めたら俺のタイプ
だから。」
「古賀さん…」
キョーコはドキリとする。
「バーカ。女子高生には興味なし
だよ。」
古賀はキョーコの頭を撫でた。
「今日は難しい殺陣だから気を抜い
ちゃダメだよ。怪我するからね。」
「はいっ！！」
「蓮、キョーコちゃんみつけた？」
社は声をかけてハッとした。
腕組みする蓮の視線の先には楽し
そうに話すキョーコと古賀がいた。
(…新しい馬の骨が人気を二分する
古賀くんか。大変だな蓮。)
End
2019.5.1初稿
2019.12.19加筆修正