プチネタバレあり。珍しく暗いです。
それでもよろしければ…。
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モー子さんがハリウッドデビューする。
撮影に２年かかるそうだ。
主役は敦賀さんで同じく２年間日本に
戻ってこない。
私、最上キョーコは、上杉飛鷹くんと
大粒の涙を流して空港で見送り、会いに
いくねと約束した。
けれど、「泥中の蓮」の大成功により
大河ドラマのヒロイン役に抜擢され、
国民的女優と言われるようになり、ドラマ
CMに引っ張りだこになってしまい、
アメリカにいくどころか睡眠もままなら
ない状態になってしまった。
それでも、時間をみてはモー子さん、
敦賀さんにメールを送り、返事もきて
いた。
しかし、１年後。予期せぬ展開が私を
待ち受けていた。
モー子さんと敦賀さんの熱愛報道だ。
二人はゴシップだとメールしてきたが
私は「おめでとうございます。お似合い
ですよ。」と返して、その後、二人に
連絡することはなかった。
「泥中の蓮」森住監督には特に
可愛がられ、全ての作品のヒロインに
抜擢して頂いた。
相手役はほとんど古賀弘宗さん
なので、あうんの呼吸で演じることが
できた。
京都長期ロケを明日に控え準備して
いた私は今日、敦賀さんが帰国する
ことを知った。
会いたい！強く思った。
けれど、モー子さんと交際中の敦賀
さんに会う自信がない。
ほんの少しなら…変装して一般客に
紛れてほんの少し顔を見るだけなら。
今は防犯のため、外出の際はボディ
ガードが３名ついていた。
しかし、理由を告げたくないので
誰にも連絡しないで空港に向かった。
帽子を被り、サングラスとマスクを
つけてフアンと共に敦賀さんを待った。
そして、大歓声と共に敦賀さんが
現れた。
にこやかに笑って皆に手を振った。
一斉にスマホがかざされ、前列の
人達は握手やサインを求めていた。
敦賀さんは相変わらず素敵で私は
思わず涙ぐんだ。
気がつかなかったが、近くの人達
がじりじりと距離をつめてきていた。
「あの、京子さんじゃないですか？」
「私、ファンです。サインをお願い
します。」
私はまずい！と思ったが、小声で
「違いますよ、人違いですよ。」
と言って上手く、その場を立ち
去った。
(…ああ、驚いた。私のこと気がつく
ひとがいるなんて。)
私は少し離れたところまで
くると安堵してサングラスを外し
た。
その時だった。ポンと軽く肩に
手を乗せられた。
「久しぶりだね。最上さん。」
中編に続く