(…あれまあ、敦賀くん、派手にキスされ
ちゃって。)
貴島は同情を禁じ得ない。
ぼんやりしていてかなり重症だ。
片想いもこじれると大変なんだな。
(…しかたない。兄貴が一肌脱いでやる
か。)
貴島はキョーコにメールした。
『京子ちゃん、貴島だけど、オーディショ
ンどうだった？』
『貴島さん、こんばんは。お陰さまで紅葉
役頂きました！』
『おめでとう！さすが京子ちゃんだね。
そうだ。君の事務所に顔を出したら面白い
もの見たよ。敦賀くん、ボーッとして鴨居
に頭ぶつけていたよ。結構重症かも。』
『えっ、大丈夫ですか？血は流れたんで
すか？病院には？』
『敦賀くん、頑張り屋だからね。自力で
どうにかしてるんじゃない？』
『そんな！私、帰りにご自宅に寄って
みます。』
『そうしてくれる？よろしくね。』
貴島はクスッと笑った。
「貴島くん、会計済んだけど？」
蓮が声を掛けた。
お色気女優にキスされて内心狼狽えて
いるであろう蓮がすました顔をしていた
ので貴島は吹き出しそうになった。
「敦賀くん、ご馳走様。また、よろしく
ね！」
End