蓮は見送りに外に出た。
暗闇にフラッシュが光った。
「………！！」
「ふふ、おやすみなさい。」
女はハイヤーに乗り込み、去っていった。
「敦賀くん、やられたね。あれ、テレビ局
のカメラだよ。明日のワイドショー楽しみ
だね。」
「………………。」
「ま、たまにスクープされるのもいいよ。
あっち系だと思われるからさ。」
「………………。」
「見た？敦賀くんのお相手。」
「見たわぁ。ちょっと幻滅しちゃった。」
「判るう。あの人はないよね。」
「ないない！」
「泥中の蓮」読み合わせ会場はざわつい
ていた。
「どうしたんですか？」
昨日、病院で治療を受け、今朝もテレビ
を見ていないキョーコは朝比奈に聞いた。
「京子さん、知らないんですか？同じ事
務所なのに？」
朝比奈に説明を受け、キョーコはスマホ
を取り出す。
『敦賀蓮、初ロマンス！お相手は…』
今日から社は蓮のマネージャーに戻っ
た。
昨夜、電話が来た。
「キョーコちゃんの読み合わせ期間中は
蓮のマネージャーに戻るね。琴南さんも
キャスティングされるみたいだから大丈
夫だよね。」
「あの…敦賀さんは休みじゃ「がしゃ
ん！」
一方的に電話は切れた。
蓮は数日休みと言っていたし、仁子事件
があったので森住監督に一言物申すとはり
きっていた社だった。
(…こういう訳だったんですね。森住さん
じゃなかった。敦賀さんの想い人…すごく
大人の女性ですね…)
キョーコは俯いて身体を震わせた。
手の甲には涙の滴が次々と落ちてきた。
End