「忘れたらあいつが可哀想だ。アメリカの
父がいるだろ?」
ローリィの言葉にキョーコははっとす
る。
「先生?!」
キョーコは顔を輝かせたが、すぐに
沈んだ。
「どうした?最上くん。」
「先生は無理ですよぉ。いくらなんでも
私なんか行っても…。」
「何を言ってる!あいつは喜ぶに決まっ
ている。何せ未来の娘…いや、未来のス
ターの世話ができるんだ。よし、私が頼
んでおこう。」
「ありがとうございます、社長。よろし
くお願いします。」
キョーコは深々とお辞儀した。
(…そうこなくちゃな。クーがプロデュー
サーに掛け合った甲斐がない。)
クーと妻のジュリエナは蓮がキョーコを
フィアンセとして連れてくるのを指折り
数えて待っていたがまったく気配ないの
に業を煮やし、キョーコを訪米させるた
め売り込みにかかった。
折しもハリウッドは忍者ブームで日本
人の忍者スターを探していた。「泥中の
蓮」の紅葉は絶好のPRになった。
(…最上くんで蓮を釣ろうとしているよう
だが、クーよ、蓮はスケジュールがまっ
たく空いてないぜ。どうする?)