キョーコは蓮と夕食後、蓮が「RINlJIN」
の原作者の作品に主演したことがあると
いうのを聞き、前作DVDを見せてもらう
ことになった。
「敦賀さん、シェフ役だったんです
か？」
キョーコは驚く。
「うん、有名シェフが作るのを見て格好
だけ真似をした。」
「すごく楽しみです。」
二人は並んでソファに座った。
離れて座ったのに蓮に距離をつめられて
ドギマギするキョーコ。
(…近すぎます、敦賀さんっ！)
シェフ役の蓮は「マウイオムライス」の
時とは雲泥の素晴らしい包丁さばきをみ
せていた。
「わあ、名シェフにみえます。」
「格好だけはね。」
ラブシーンもふんだんだが、違和感が
あった。蓮が上半身裸になるシーンは多
いが、絡みが少ない。なんといってもキ
スシーンがない。
(…なんか、なんかラブシーンが…)
「ラブシーンが嘘くさいだろ？」
蓮はさらりと言った。
「そんなこと…」
図星を指され、狼狽えるキョーコ。
「いいんだ。社長にも言われたし。」
返事をしようとしてキョーコはハッと
した。
蓮がキョーコを見つめながら髪に触れ
たり、頬を撫でたり、し始めたからだ。
「あの/////」
「俺は好きな娘としかキスしない。」
「はひっ、そ…そうですか。」
「好きな娘とならいろんなことしたい
な。」
「た…例えば？」
蓮は魅惑的な微笑みを浮かべた。
「知りたい？」
「あ…私、そろそろお部屋に…」
立ち上がろうとするキョーコの手を
蓮はつかんだ。
「俺の部屋に行く？」
「へっ？」
「俺と今夜、一緒に過ごさない？」
「な、何をおっしゃるんですか？」
「嫌？」
「そうではなく、わ、私は…ひっ」
蓮がキョーコの手の甲に口付けた。
「お休み、最上さん。また、明日
ね。お風呂入って暖まってね。」
蓮はクスッと笑い立ち上がって
自室へと去っていった。
唖然とするキョーコ。
(…もしかしてからかわれた？代マネ時
代と同じじゃない！)