蓮は原作者の作品に過去に主演していて

 それからの付き合いで新刊が出るごとに作

 品が送られてきていた。

    「RINlJIN」は隣の部屋に住む男女がふと

 した偶然で知り合い、結婚する話だ。

     なかなかロマンチックでヒロインが作る

  料理がなかなか凝っていて蓮はヒロインを

  勝手にキョーコのイメージで読んでいた。
 
  ラブシーンも濃厚でこの役を貴島くんにさ

  れたらもしかしたら…の不安がある。

      最初は確かに設定が判らなかったが、

  松島や他のスタッフに聞いてすべてを把握

  していた。

      しかし、知らないふりをしてキョーコに

   聞いた。

      キョーコは「見当違いも甚だしい」と

   呆れているだろう。

       そこで彼女に頼んだ。

     「よく、判らないので一緒に暮らして教

   えてくれないか?」
   
       蓮の言葉にキョーコは固まった。

     「何故に、敦賀さんと暮らさなければな

     らないのでしょう?」

     「距離感がまったくわからない。その

     …貧乏、いや庶民的な生活を俺に教えて

      もらえる?」

       「敦賀邸でですか?」

       「使用するのは俺の寝室とゲストルー

     ム。雰囲気を出すのに廊下に物干し台を

     用意するね。」

       「は…はあ。」
 
         キョーコは乾燥機つきの蓮のマンショ

       ンに鎮座する物干し台を想像するだけで

       滑稽だと思った。