「やあ」
蓮の登場にキョーコは驚いた。
だるまやからマンションに引っ越し
していたが、会う機会が減り、連絡
していなかった。
「どうしてここに…」
「社さんに聞いてきた。一人暮らし
していたんだね。社さん、何も言ってな
かった。だるまやの御夫婦よく許した
ね。」
「もう、二十歳ですから。」
キョーコはふと、女将との会話を思い
起こす。
「キョーコちゃん、一人暮らししなさ
い。ここに住んでたら敦賀さんが訪ねて
来にくいだろう?」
「何故、敦賀さんが訪ねて来にくいん
ですか?敦賀さん、だるまやに顔を出し
てますよ。」
「ふふっ。今にわかるよ。」
「最上さん?」
「あ、すみません////狭いですがどう
ぞ。」
キョーコは居心地が悪かった。
自宅に蓮がいるのもドキドキするが
体調不良で休んだのにパジャマ姿で
なく部屋着姿でいることに罪悪感を
感じた。
「敦賀さん…」
キョーコが土下座モードに入ろうと
するのを蓮は止めた。
「いいよ、判ってるから。」
キョーコは蓮が怒ってないのでホッ
とした。
「あの、どうぞ座ってください。」
キョーコは蓮にソファを薦め、
自分は座布団に正座した。
「言ってくれたら、引っ越し手伝っ
たのに。」
「そ、そんな。荷物少ないですし。」
「俺にどうして連絡してくれなかった
の?」
「後輩の引っ越しごときを日本一忙しい
先輩のお耳に入れるのもと思いまして
…。」
俯きながら話すキョーコに蓮は溜め息
をついた。
「君は何も分かっていない。俺は最上さ
んのことは何でも知りたいし、何でも手
伝いたい。」
「え/////」
キョーコは顔を赤らめた。
そう、蓮は思わせ振りな発言が
多い。「もしかしたら、私のこと///」
と思い違いしそうになる。
だからこそ蓮と少し距離を置いて
いた。
仲良しの後輩として「キョーコちゃ
ん」さんと蓮の結婚式に呼ばれるのも嫌
だし、結婚した蓮と一緒に芸能界にいら
れるかどうか自信ないので、将来の転職
も考えて大学に入学した。
複雑な感情が交錯する中、思いがけず、
ドラマで共演になった。
仲良しの後輩として普通に接しようと
していたのに蓮は「サクラ」に関心を寄
せていた。
悔しさと心地よさで蓮を誘惑していた
が、昨日の言葉ですべてが崩れ落ちた。
「昨日は言い過ぎたと思う。驚いただろ
う?ごめんね。」
「え?」
キョーコは驚いて蓮をみつめた。
全面否定?!
「最上さんの気持ちを考えず、俺の気持
ちを話してしまった。嫌だったよね。」
「あっ、あの/////」
「俺が心惹かれているのはナツでもセ
ツでもサクラでもなく最上さんだと言
いたくて…。」
「///////」
真剣な蓮の眼差しにキョーコは衝撃を
受ける。
「君がグレートフルパーティに2年連
続欠席なのはショックだった。毎年、
一番に祝っていたのに…。せめて電話
だけと思ったけど、去年は繋がらな
かった。もう、どうしようもなくてス
ケジュールを調整して貰ってこのドラ
マに参加した。」
「敦賀さん…」
「最上さん、俺は君を愛してる。」
リク罠&逆引きドボン作品記録<7>