「泊まっていって欲しい」
蓮の真剣な眼差しに顔を赤らめることな
くキョーコは受け止めた。
「二十歳になったから恋人の家にしか
泊まらないの。」
無邪気に微笑むキョーコに面食らう蓮。
「それなら…」
蓮が話すのを遮るようにキョーコは
蓮の首に両手を巻き付け、軽く口付けた。
「お休みなさい、また明日！」
蓮はキョーコの行動が理解できない。
(…からかわれていたのか？最上さんらしく
ない言葉は一体何なんだ？！)
「敦賀くん、本番いきます！！」
今日も妖艶なサクラと対峙している
蓮。
「ボス、肩凝っちゃった。トントン
してくれる？」
サクラが誘ってくる。
蓮は突然、気がついた。昨日の最上
さんはサクラだ！！
「カーット！敦賀くん、台詞！！」
(…なぜ、プライベートもサクラなんだ？)
考え込む蓮に監督が近づいてきた。
「敦賀くんも京子ちゃんの色気にやられ
ちゃってる？」
「も？」
「アップになるごとにスタッフがトイレ
にいっちゃうから困っちゃうよ。さすが
恋人にしたい女優No.1だな。政治家に
なって欲しい女優No.1とのギャップが
すごいよね。」
そうなのだ。ここ数年で馬の骨は
日本中に増殖中だ。
だから向こう(ハリウッド)にいけない
でいた。
「お前は馬鹿か？最上くんを監視する
ためにアメリカに行けない？さっさと
告白しろよ！俺が知ってるだけでも最
上くんに想いを寄せているやつは10人
は下らないぞ。もうすぐカイン・ヒー
ルの正体も発表されるからな！」
ボス(ローリィ)の叱咤激励は嬉し
かったが、肝心のキョーコの気持ちが
分からなかった。事務所の先輩以上に
昇格しているとも思えない。告白した
ら迷惑ではないのか？もっと親しく
なったら…そう思っているうちに４年
の歳月が流れた。
「敦賀さん、お疲れ様でした。また、
ご自宅にお邪魔します。」
キョーコは深々とお辞儀した。
(…いつもの最上さんだ。)
蓮はホッとしていつもの先輩
敦賀蓮として挨拶した。
「お疲れ様、夕食なにか作ってもらう
とありがたいな。」
「はいっ！」
蓮は知らなかった。この会話が後々の
二人の関係に影響を及ぼすことを。
リク罠＆逆引きドボン作品記録＜７＞