その人はフランスの橋の欄干に佇んで
いた。
ロマンスグレーで年齢を重ねた深みのある
顔立ち。年齢は40代半ばくらい?
長身にトレンチコートをまとっていた。
世代を問わず女性がうっとりとみつめなが
ら通りすぎる素敵な男性。
まるで…まるでお年を召した敦賀さん?!
キョーコは物陰からその男性を見つめて
いた。
(…まるで、まるで未来の敦賀さん/////)
こっそり何枚もスマホで撮影。
そしてガン見。
(…幸せだわっ///きゃあ、きゃあ。)
事務所から突然与えられた休暇で
これまた一方的に渡されたパリ行きの
チケットを受け取り、何となくセーヌ川
のほとりを歩いていたら愛しい人によく
似た人に遭遇した。
舞い上がるキョーコ。
すると、その男性は脇目もふらず
キョーコに向かってきた。
(…えーっ、盗撮ばれた?!)
キョーコは後ずさる。男性に肩を
掴まれる。絶対絶命だ!
「すみません!盗撮するつもりは「最上
さん!!」
男性はキョーコの名前を呼び、抱き
締めた。
「あの?どちらさまで?破廉恥ですよっ
////」
「俺だよ、最上さん。」
「えっ?!」
見上げれば神々スマイル。
「敦賀さん?」
「ふふ、正解。」
蓮は微笑んだ。
「これは一体?」
キョーコはおずおずと抱擁を解き
蓮に訊ねた。
「今、ロケ中だよ。映画のラストシー
ン。亡くなった恋人を回想していた。
あ、黒崎監督もいるよ。」
蓮が指差したのは頭上のクレーン車。
「京子久しぶり!元気か?盗撮はダメ
だぞっ!」
相変わらずの無神経発言に顔を紅潮さ
せるキョーコ。
「俺がボスに頼んだんだ。最上さんを
パリに向かわせて欲しいと。」
「え?」
「ちょっと待っててね。」
蓮はメイク係にメイクを落として
もらった。
いつもの敦賀蓮に戻る。
「お待たせ。」
「いえ//////」
「ここにきてもらったのは、君に、
最上キョーコさんにプロポーズする
ためだよ。」
「え、えーっ/////」
「キョーコさん、俺と結婚してくださ
い。」
片膝をつき、キョーコの指に口づける
蓮。
キョーコは驚き、目からは大粒の涙が
流れる。
「あのっ、敦賀さん、私でいいんです
か?喜んで!」
「キョーコ!!」
蓮はキョーコを強く抱き締め、熱い
キスを落とす。
『愛するあなたと。セーヌ川で逢いま
しょう。フランス観光協会。』
奏江「これ、ホントなの?CMなの?」
千織「さあ。」
尚「これ、何なんだ?CMだよなっ!」
祥子「さあ。」
椹「これ、どういうことなんです
かっ!CMでいいんですよね!」
宝田「さてな。表情をよく見てみろ。」
社「蓮っ!どういうことなんだ!」
蓮「見たままです。」
キョーコ「いやあああああっ?!!」
End
2018.7.27加筆修正