(…敦賀さんとモー子さん/////)
キョーコは顔を紅潮させた。
思わず、拳を振り上げた。
「イエイ！頑張るぞ！！」
「あの…京料理を私が役員様に？」
キョーコは椹に聞き返す。
「役員会の昼食に最上さんの京料理をと
注文があってな。俺もよくわからん。
何で女優にそんな注文するかなあ。」
椹は顔をしかめた。
「大丈夫です。ラブミー部のお仕事とし
て誠心誠意務めさせていただきます。」
キョーコは微笑んだ。
50人前と言われて面食らったが、どう
にか、こなすことができた。
全ての容器が空になって帰ってきて
キョーコは満足だった。
しかし、キョーコは知らなかった。
これが彼女を陥れる罠だということ
に。
番組最後の日。
キョーコは『京子』として坊の姿を
みていた。
ウイットに富み、動作も軽快だ。
ブリッジロックとのコミュニケー
ションもばっちりだ。
(…貴方は一体誰ですか？)
キョーコが想像した社は舞台袖に
いるし、奏江は審査員としてこれから
登場するのだ。
そして料理対決。
「さあ、皆さん、芸能界一の料理上手は
我らがマスコット『坊』か？個性派美人
女優『京子』か？いよいよ決定です。
テーマは京料理です！！」
紹介される坊と京子。坊はヤル気満々
だ。シェフ姿も決まっている。
(…誰であろうと絶対負けないわよ！)
キョーコはメラメラと燃えてきた。
ゲストの紹介が始まる。
「人気実力共にトップ、抱かれたい俳優
No.1敦賀蓮さん！二時間ドラマが大人
気クールビューティこと琴南奏江さ
ん！そして、審査委員長は噂のイケメ
ンマネージャー社倖一さん！」
「キャー、キャー！！」
大歓声で３人が迎えられた。突然の
蓮の登場に倒れるひと多数。
「よろしくお願いします！！」
はりきるキョーコ。バチバチと火花を
散らし、キョーコに微笑む蓮と奏江。
手を振る社。いつもキョーコの料理を
食べている３人ならいつも出している
ものを出せばキョーコが作ったものとわ
かる。
キョーコは用意された九条ねぎ、京水
菜、聖護院大根などの京野菜を手にし、
普段どおりでいこうと決めた。