蓮は久しぶりに自宅でキョーコとソファ
に並んで座った。
このまま、ゆっくりしたい気分では
あったが、そうはいかない。
キョーコの出席するパーティは日頃
会社がお世話になっている映画会社主催
だ。
配給する映画のヒロインであるキョ
ーコが欠席というのはとても許される
ものではない。
フォローのためにLME所属俳優が
何人か会場に向かった。
俳優、女優は気まぐれな人間が
多いので30分くらいなら遅れても
許されるだろう。俺は遅刻しないけど。
とにかく説得だ。
「最上さん…あの」
「敦賀さん、私いいですよ。ジュリエナ
さんのこと。」
「え？」
蓮は驚いてキョーコを見つめた。
「私、知ってました。敦賀さんがジュリ
エナさんを好きなこと。」
蓮は呆然としてキョーコをみつめた。
「敦賀さんが私にナツ用のウォーキング
を教えてくださったとき、世界一のモデ
ルのウォーキングを教えてあげると言っ
てました。それはジュリエナさんのこと
ですよね？」
「あ…ああ」
「モデルの方たちにジュリエナウォー
キングだねと言われて私、DVDでジュリ
エナさん見ました。敦賀さんの指導して
くださったのと同じだと…すごく美しい
方ですね。まるで宝石のようでした。
妖精の一族かなと思いました。コーンに
似てました。」
(…親子だからね。)
「私など足元にも及びません。敦賀さん
の片想いなら私、お付き合いを続けさせ
ていただきますが、両想いなら私は諦め
ます。先生(クー)も一時は落ち込むかも
知れませんが、あれだけの方ですから別
の出会いもあるでしょう。傷が癒えるま
で私がお世話をしても…。」
「！！」
彼女はまたスイッチを押した。
『曲解迷走スイッチ』を。