「敦賀さん、風邪を引かれたんですか？」
キョーコは社に聞き返していた。
「そうなんだよ、珍しいだろう？だから今
日の夕食の準備は大丈夫だよ。」
「は…い。」
キョーコは社と別れたあと、蓮のマン
ションにむかった。
実は、前回、蓮から行き違いにならない
ようにとカードキーを渡されていた。
心配なのでこっそり様子を見たいと思っ
た。
スーパーで必要なものを揃え、カード
キーで蓮のマンションに入った。
(…起こさないように静かに…静かに)
キョーコは冷蔵庫に飲み物や食料品
を収納し、氷嚢を作った。
久しぶりに蓮の部屋に入る。
蓮は眠っているようだが、熱がある
せいでうなり声をあげていた。
暑いのかパジャマの前を開けていた。
(…セクシー過ぎます。敦賀さん////)
キョーコは蓮の額に氷嚢をのせた。
「う～ん、キョーコ？ありがとう」
キョーコは後ずさった。
デジャヴ？！また、キョーコ！
「愛してるよ…キョーコ。」
キョーコの目には涙が溢れていた。
(…敦賀さんなんか、大嫌い！！)
キョーコは蓮の裸の胸に口付けると
走り去った。
翌日。
「蓮、もういいのか？」
社は蓮に声をかけた。
「はい、お陰さまで。」
挨拶しながら、隣にいるキョーコを
じっと見つめた。
「最上さん、昨日、家に来てくれた？」
一瞬、肩をびくんとしたが、キョーコ
はゆっくりと顔をあげ、微笑んだ。
「行っていませんよ。」
「そうだよ。行くわけないだろ？変な
奴だな。」
社の言葉に蓮は笑った。
「そうですよね。合鍵もないのに。」
蓮はチラッとキョーコを見た。
「あのっ！敦賀さん、社さん。私、
お仕事に行きますね。」
キョーコはバタバタと慌てるように
挨拶して立ち去った。
「何だよ、蓮。キョーコちゃんに来て
欲しかったのか？」
社にからかわれて蓮は照れ笑いした。
「なんとなく最上さんの気配を感じた
気がして…。気のせいですね。」
「気のせい、気のせい。」
笑う社の横で蓮はそっと胸を押さえ
た。
(…女優は板についたけど、証拠は隠滅
しないとね。)
End