「エントリーNo.6京子さん」
「はい、よろしくお願いします！！」
キョーコはステージに上がり、深々と
お辞儀した。
「シーン166 告白」
その時、蓮が立ち上がった。
「相手役を務めます。」
キョーコは身体を震わせた。
「よろしく…お願いします。」
指定されたのはラストの告白シーン。
「スタート！」
「真琴、どうしたの？こんなところに
呼び出して。」
蓮の低く落ち着いた声がステージに
響き渡る。
(…敦賀さんの声だ。相変わらずセク
シーな低音…)
それだけでジーンとするキョーコ。
(…駄目、駄目！台詞を…)
「貴方に気持ちを伝えたくて…」
「真琴…。」
キョーコは腕に力を込めた。
「貴方のことが好きです。離れ離れな
んてもう生きていけない。貴方の側に
いさせてください。仕事も家族も捨て
ますから。」
キョーコの目から涙が止めどなく溢れ
ていた。
(…敦賀さん、愛してます。私はあなた
なしでは生きていけません…)
「………もが…真琴」
「はい、OKです。オーディション終了
します！」
「キョーコちゃん！」
涙を溢れさせ、走り去るキョーコを
社は呼び止めようとした。
「待ってください。俺、行きますか
ら。」
それを止めたのは蓮だった。
「蓮！頼むよ。」
社はキョーコを追いかける蓮の後ろ姿
を見ながらほっとした。
(…キョーコちゃんよかったね。)
「うっ、ひっく…ぐすっ」
スタジオ隅で泣きじゃくるキョーコ
に蓮はそっと近づく。
「無茶するね。最上さん、朝ドラ降板
させられるよ。」
「敦賀さん！」
キョーコは振り返る。
「どうしてこんな無茶したの？」
蓮は優しく問いかける。
「つ、敦賀さんに逢いたかったか
ら。ぐすっ。」
キョーコは俯き、指をせわしなく
動かしながら答えた。
「それはどうして？」
蓮はキョーコに顔を上げさせた。
キョーコは涙を流していたが、
瞳をきらきらさせていた。
「それは…。」
「それはどうしてかな？」
キョーコは顔を紅潮させた。
「判ってるくせに。」
「判らないよ。」
「嘘っ、判ってる。敦賀さんのいじ
めっ子！」
蓮はキョーコを抱き締めた。
「言って？俺に聞かせて？」
蓮の熱い瞳にキョーコはついに
告白した。
「敦賀さんが好きなんです！片想い
でもいいんです。お側にいさせて
ください。」
「最上さん！」
蓮はキョーコの唇に軽く触れた
後、舌を差し入れてキョーコの舌にか
らませた。
「あ…んんっ…つ・る・がさんっ」
キスは深く、熱くキョーコの五感を
刺激した。
唇を首筋に這わせながら蓮は呟い
た。
「俺の気持ち分かってくれた？」
「はい…/////」
「俺の宿泊しているホテルに来て。
これからのこと話したい。」
「はいっ！！」
二人の様子を見ていた社は涙ぐむ。
「よかったな。蓮、キョーコちゃん。」
「ほーんと。さっさと告白すればいいの
にまどろっこしいね。」
「新開監督！」
「ったく、蓮のヘタレめ。ハリウッド
に行く前に、最上くんに告白もせずに
行っちまいやがって。逢いたさが募って
あいつはアールマンディのコレクション
をキャンセルしちまった。 」
「宝田社長！」
社は、二人を交互に見比べた。
「宝田社長、ではご指示通り、ロケは
京都にいたしますので。」
新開は微笑んだ。
「ああ、悪いな。朝ドラ側も文句ねえ
だろ。後半から蓮が出演するんなら
よ。」
(…何これ？妙に手回しよくないか？もし
かして…もしかして仕組んだ？！)
社はハッとして宝田を見た。
「社、楽しいな。ははは」
お腹を抱えて笑う宝田。
(…二人にはとても話せないよ。社長には
敵わないな。)
社は苦笑するしかなかった。
End
2018.7.1加筆修正