「嘘っ!京子や。朝ドラでてるやん。」
「掟やぶりやね。本気?いくら敦賀さんが
相手でもさ。」
オーディション会場にキョーコが現れる
と会場がざわめいた。
朝ドラは関西が舞台なので関西出身者
は相当数が見ていた。
キョーコは『泥中の蓮』から始まって
約一年半、映画とドラマが京都と大阪と
いうのが続いていた。
蓮がハリウッドに行く前から逢えない
状態になっていた。
都内にいなければ、食事の依頼はな
い。勿論、マンションに呼ばれることは
ない。所詮それだけと割りきろうとして
いたが、キョーコは逢いたかった。
逢えるチャンスは今日だけ。
(…敦賀さん、やっと逢えますね。)
「『再会』最終オーディション始めま
す!!番号と名前を呼ばれたらステージ
に上がってください。」
蓮、新開監督ら審査員が現れる。
蓮はすぐにキョーコを見つけ、にっこ
りと微笑んだ。
(…敦賀さん!)
キョーコはきてよかったと思った。
女優生命が絶たれてもいい…。
(…キョーコちゃん、切ないな。)
社は涙を流しているキョーコがいじ
らしかった。