「キョーコちゃん、君は自分が何をしよう
としているか分かってる？」
現在、キョーコのマネージャーをして
いる社は詰問した。
「分かってます。」
キョーコは静かに答えた。
「いいや、分かってない！君は朝ドラの
ヒロインだ。開始して３ヶ月、20%を叩き
出す人気女優になった。このドラマの契約
覚えてるよね？」
「はい、あと9ヶ月は他の映画やテレビに
出演できません。」
「分かってるなら結構！君がオーディ
ションにいく映画は決定したら即、ロケ
だ！オール北海道。どうするの？毎日、
北海道と関西を往復するの？」
「選ばれるかどうか分かりません。」
「選ばれたら困る！というか受けに行く
ことが朝ドラの担当者に知れたら大変だ
し、うちの上層部に知られても大変なこ
とになるよ。そんなに蓮に逢いたい？」
「……はい。」
「確かに蓮は１年ぶりにハリウッドから
戻り、日本で新作映画を撮る。終わった
ら戻るだろう。しかし、君は９ヶ月経っ
たら少し休みが入る。逢えるよね？」
「そんな先……」
「キョーコちゃん、そんな無茶しない
で蓮にメールか電話で告白してご覧？
いい結果が出るかも知れないよ。」
蓮の気持ちを知っている社はキョーコ
に連絡を促す。
国民的人気女優になってなお、キョー
コは自分に自信がなく、「私なんか」を
繰り返している。じれったいと社は思う
がキョーコは真剣だ。社はせめて椹には
言っておきたいと思うが想像しただけで
恐ろしい。
「社さん、大丈夫ですよ。もし、選ばれ
ても辞退しますから。会場に社さんは
付いて来なくていいですよ。私が勝手に
すること。自己責任です。何かあっても
知らないと言ってください。」
「キョーコちゃん…」
社は随分前から二人が相思相愛と知って
いる。多分、社長や椹も知ってると思う。
将来、適当な時期に…と思ってるふしが
ある。しかし、若い二人だ。キョーコちゃ
んがこれだ。蓮は相当テンパってると思
う。
会場で駆け落ちなんかされたら大変だ。
「分かった。しかし、俺はキョーコちゃ
んのマネージャーだ。付いていくよ。」