「勉強になるから蓮の演技を見てきなさ
い。」
宝田社長の言葉を受けて蓮の撮影現場
を訪れたキョーコ。
人気刑事シリーズの最終回。
なんとラブシーン！！
「最上さん、見学なの？う～ん。」
蓮は何ともいえない表情をしていた。
(…後輩に見られるの嫌なのかな？)
「スタート！！」
「俺は相楽夏季が好きだ。」
蓮は夏季の唇を指でなぞる。
切れ長の大きな瞳で夏季を見つめなが
ら唇を合わせる。
絵のように美しいラブシーンだと
キョーコは思った。
瞬間、胸に棘が刺さったような
痛みを感じた。
(…あれ？)
「カーット！OKです。」
蓮はキョーコに駆け寄った。
「勉強になった…かな？」
「はい。素敵でした。」
キョーコは微笑んだが、涙が零れた。
「最上さん？」
「どうしたのかな。やだ、涙が止まら
ない。」
キョーコは蓮に笑ってみせたが、
涙は溢れてくる。
蓮はそんなキョーコを抱き締めた。
「俺、最上さんの前で他の女性とキス
するの嫌だった。最上さんがいい。」
「私も敦賀さんが他の女性とキスする
の嫌でした。」
「最上さん！」
蓮はキョーコに濃厚なキスをした。
長いキスの後、二人は見つめあって
微笑んだ。
「ずっと君のことが好きだった。」
蓮の言葉にキョーコは目を潤ませた。
「俺のマンションに来て」
蓮は低く、くぐもった声で囁いた。
キョーコは返事はしなかったが、
コクリと頷いた。
その頃、宝田は社と飲んでいた。
「この企画は何なんですか？」
社に聞かれて宝田は笑った。
「両片想いの二人に愛の手を差し伸べ
る慈善事業だな。」
「うまくいったんですかねえ。」
「さあな。蓮次第かな。」
End
2018.7.22加筆修正