「何故、最上さんじゃなきゃいけないん
だ?彼女の忙しさは知ってるだろ?社く
ん。」
椹は不機嫌そうに社に訊ねる。
「俺も向こうの現場のことはよくわからな
くて。ただ、最初にキャスティングされた
のが、美森で大丈夫かなとは思ってまし
た。」
「おかしいのは蓮の役だろ?いくら世界
の近衛監督の作品でも蓮のイメージ台無し
じゃないのか?」
「は…あ」
社も椹の意見が正しいと思う。
社には蓮の気持ちがわからない。
ハリウッドならイケメン俳優は
汚い役や悪役などをこなしたりするが
日本はイメージ重視のところがある。
蓮は抱かれたい俳優ナンバー1
なのだ。あの役はないだろう。
「しかし、蓮がどうしても最上さんに引
き受けて欲しいと言うのにはよっぽどの
訳があるんだろう。いいだろう。社く
ん、スケジュール調整をしてくれ。その
代わり、君に頼みがある。うすうす分
かっていると思うが…。」
椹にされた提案は…。
「俺が鶏の『坊』!出来ないですよ!」
社の言葉に椹は冷たくいい放った。
「じゃあ、最上さんの話はなし。」
「うわあああっ、やりますよ!」