「彼がここにいることが不自然で、演技も
嘘臭くて俺的には心配です。」
助監督にミスキャストを指摘され
苦笑する監督の近衛。
「スタートしたばかりだからね。第3話か
ら美森さんがしっかり者の彼女として頑
張ってくれるから。」
しかし…。
「きゃああああっ」
熱い鍋に右手が触れ、飛び上がる美森。
蓮はすぐに蛇口から大量の水を流して
美森の手を冷やした。
「冷たいけど、我慢してね。しばらくこ
うしてるね。火傷は最初が肝心だから
ね。」
蓮は美森が納得するように説明後、
にっこりと微笑んだ。
「ありがとうございます///」
美森はひたすら頭を下げた。
「いえ、どういたしまして。軟膏も
塗ったほうがいいね。」
近衛は明らかにミスキャストである
二人に溜め息をついた。
(…一人はLMEの看板スター敦賀くん。
もう一人はアカトキ社長推薦の美森さ
ん。う~ん、どっちもどっちだが、
敦賀くんを降板させるのは幾らなん
でも無理だな。)
翌日。
「美森さんは降板することになりまし
た。後任の目処が付きましたら皆さんに
ご連絡いたしますのでそれまでお待ちく
ださい。」
助監督がキャスト全員に話した。
「俺も降板していいっすか。他とのス
ケジュール調整が厳しくなるんで。」
村雨があっさり降板。他のキャスト
も何人か降板した。
(…美森が降板しても敦賀蓮が主演では
この作品はきっとコケる。)
皆が心の中で感じていた。