「うわあ、最上さん、学年１位だ。」
「女優なのにすごいよね。」
学年１位を譲った伊藤勉は悔しがる
ことなく頷いた。
(…ひとつ間違えたから2位は当然だな。
最上さんは満点か。よしよし。)
「最上さん、『dark moon』にでてるよ
ね。」
「怖いけど、演技うまいよね。」
(…最上さんがドラマに？！ぜひ見ない
と。)
勉は初めてテレビでドラマをみた。
普段はテレビは見ない。
よくて朝のニュース程度だ。
第五回のようだ。ストーリーは
どうでもいいと勉はキョーコを探した。
「これだ！未緒。」
黒髪で傷があり、長いドレスを着た
キョーコ。
ものすごい存在感に勉はごくりと
唾を飲んだ。
(…台詞ひとつひとつが計算され尽くし
ている！さすが最上さんだ！)
「えっ、見てくれたの？ありがと
う。」
キョーコは勉に礼をいった。
「最上さんは女優と勉学の両立も出来
ると思うな。」
「は…あ。」
「本場の米国か英国で大学に行きなが
ら芝居の勉強をすればいい。僕はどち
らでもOK。二人とも英会話に困らない
しね。」
「……………。」
「って伊藤くんに言われちゃった。」
キョーコの話に奏江は勉は本当に
残念な奴だと思った。
「最上さん、そんな奴とでなく俺と
アメリカに行かないか？」
蓮が突然現れた。
「敦賀さんもお芝居の勉強をしにです
か？」
キョーコはパーっと顔を輝かせた。
「ん、まあ…そうだね。」
「なんて向学心に溢れているんでしょ
う！さすが我が主ですっ。」
「ははっ……。」
どいつもこいつも残念な奴と思う
奏江だった。