蓮は社長と別れたあと、ラブミー部に
寄り、いつものソファに腰掛けた。
最上さんと琴南さんは『泥中の蓮』の
オーディション中。
天宮さんは『マジスカ』生放送出演中。
今日は誰もここにはこないだろう。
社長が話した『写真』の件は正直ショッ
クだった。
事情は理解できるが、不破がまたキョー
コにキスしたのが嫌だった。
傷ついているキョーコにあいつはキスし
た！！
どうしても許せない。いつまでもキョー
コに付きまとう最大の馬の骨。
今の蓮には『敦賀蓮』を演じることが
できなかった。
まるっきりクオン・ヒズリ。
誰もいない部室で気持ちを落ち着かせよ
うと思った。
「敦賀さん？」
俯いていた蓮に声を掛けたのはキョーコ
だった。
突然の登場に蓮は驚く。
「最上さん？どうしたの？オーディショ
ンは？」
嬉しいけど、今は会いたくなかった
愛しい人。
平静を装い、さりげなく訊ねた。
「終わりましたよ。」
素っ気ない口調プラス顔色が良くない
キョーコを見て蓮は納得した。
「お疲れ様。どうしたの？オーディ
ション終了したら帰っていいはずだ
よね。」
「ちょっと…いろいろありまして」
キョーコは言いよどんだ。
まさか蓮を前に森住仁子の話は
できない。
キョーコは必死に表情を作った。
明るく…自然に…。
「ご挨拶が遅れました！敦賀さん
お帰りなさい！」
キョーコは明るく挨拶したが、
蓮にはあまりにも痛々しく感じて
立ち上がると、思わずキョーコを
抱き締めた。
「敦賀さん？///」
キョーコは突然の抱擁に驚いた。
「悲しいときは泣いてもいいんだ
よ。」
「え？」
キョーコは自分の恋心を知られ
たのかと動揺し、凍りつく。
「オーディションはうまくいかないこ
ともある。これを糧に「ぷぷっ」
蓮の言葉にキョーコは吹き出した。
「敦賀さん、私、紅葉GETしました
よ。」
「え？そうなの？表情が暗かったから
ダメだったのかと。おめでとう！」
神々スマイルを浮かべる蓮を眩しそう
にキョーコは見つめた。
(…やはりあなたが大好きです。想い人と
あなたが結ばれるまでずっと好きでいさ
せてください。)
蓮は微笑むキョーコを見つめながら
心が温かくなるのを感じた。
(…愛してるよ。最上さん。)
End
2017.11.12加筆修正