「坊でガールズコレクション出演です

    か?」

       キョーコは驚いた。

    「モデル達が坊と歩きたいんだとよ。」

     プロデューサーが説明するのも面倒くさ

  そうに言った。

      「は…あ。」

      ガールズコレクションは楽しそうだが
   
    京子としてでなく坊なのが複雑な気分だ。

       「あの、あまり長い時間は…。」

      キョーコがおずおずと言うとプロデュー

   サーが小馬鹿にしたように吸っていた煙草

   の煙を吹き掛けた。

      「オープニングとエンディングだけ

     だ。」

      「ゴボッ、ゴホッ…はい判りました。」



   
       ガールズコレクションが始まった。

     オープニングは坊と人気モデル達。

     蝶ネクタイをし、薔薇の花を手にした

     坊が顔馴染みのトップモデル大友ほのか

     に薔薇の花を手渡す。

       「まあ、ありがとう。坊!」

      ほのかが坊の頬に口づけの真似をすると

   大歓声が上がった。

      手を振る坊とモデル達。

     盛りあがる会場。

      「ありがとう、坊!」

      モデル達とハイタッチする坊。


       
      坊は水分補給の為に控室に戻った。

  「お帰り。君が出ると聞いて挨拶に来た

  んだ。」

      なんと蓮が控室を訪問していた。

    (…何で?!暑い…喉がカラカラだ。)

    「俺もエンディングに百瀬さんと

      参加することになっててね。」

     「あ、君達がシークレットゲスト?

      結婚式のシーンだろ?俺、牧師に

      なるんだ。悪い!敦賀くん着替える

      から出ていってもらっていい?」

    「え、俺は構わないよ。着替えたら?」

    「いやいや、俺の衣装もシークレット

     だからさ。」

        坊はおどけたしぐさをしながら蓮を

      外に出した。

       「ふうぅ」

        キョーコは急ぎ、坊の頭を取り、水分

    補給した。

  (…疲れた。敦賀さんと百瀬さんかあ。お

  似合いだなあ。)

      キョーコは涙が頬を伝うのを思わず

  ごしごしとぬぐいとった。


     エンディング。

   「今日のシークレットゲストは何と!

  敦賀蓮さんと百瀬逸美さんです!!」

     ウエディングドレス姿の逸美とタキシー

ド姿の蓮が現れるとその日一番の歓声が沸い

た。

  「キャー!蓮さまあ!」

      その後ろをちょこちょこと牧師姿の

  坊がついてきてお祝いを言った。

    「Congratulations!」
 
     坊は逸美にブーケを渡すと胸を張って

  帰っていった。

    その姿を蓮がじっと見つめているのに

  坊、いやキョーコは知らなかった。


    「ふううっ」

     キョーコは着替えを済ませるとテーブル

  に突っ伏した。

   (…疲れた。なんだかとっても疲れた。百瀬

さんきれいだったなあ。)

   気分が落ち込んだまま、バッグをつかみ

 控室をあとにした。

    ドアを開けると真向かいに蓮が腕組み

 して立っていた。

    先ほどのタキシード姿のままだ。

   「敦賀さん…。」

   「ここは俺の友人の鶏くんの控室のはずだ

   が…。」

    「あ、あの…。」

    「まあ、いい。帰りにじっくり聞くから。

    コレクションに参加していない最上さんが

    ここにいる理由や俺の友人と最上さんの

    英語の発音がそっくりな理由をね。」

  「あの…敦賀さんお着替えされた方が…。」

  「残念ながら自前なんだ。さ、行こうか?

最上さん?」

   「は…い」