‐‐‐‐‐‐‐プレゼント‐‐‐‐‐‐‐
「何かな」
「ん?」
「プレゼント」
「果して、気に入るかどうか」
「ショーがくれるんなら、お饅頭でも、カニカマでも、なんでも嬉しい」
「食いもんじゃねーよ(笑)」
「わかってるよー。例えばの話」
「食い意地張ってんな」
「だって、そろそろお腹すかない?」
「確かに」
駅が見えてきたところで、青木のスマホが鳴った。
「もしもし?もうすぐ駅だよ。えっ、車で来ちゃったの?せっかち」
青木が、声をあげて笑った。屈託のない笑顔を見て、俺まで嬉しくなった。
「どうした?」
「おかーさんとしゅうが、もうすぐ新百合ヶ丘着くって」
「心配なんだな」
「うん、うん、わかった。北口ロータリーね」
電話を切ると、
「あーあ、ショーと家まで帰りたかったな」
と言いつつも、表情は明るく、嬉しそうだった。
「もう、ここでいい」
駅のターミナルに向かう歩道橋の前で止まった。
「駅まで行くよ」
「うーん、ちょっとの間だけ、一人になって、浸りたいんだ」
「何に?」
「ショーの彼女になった、シアワセ」
「貧乏クジかも」
「出た、自虐グセ」
「マジで、ポンコツだから」
「いいの。ピンチになったら、私が守ってあげる」
「それはどうも」
淡々と返したが、結構グッときた。
天然で、方向オンチのくせに。
「ショーは、ショーのままでいてね」
歩道橋を登りかけながら、ひとこと発してニコッと笑った。
かわいかった。
「いいのかよ」
ホントに俺で。
思わず呟くと、
「ん?なんて言ったの?」
振り向きざま、バランスを崩してズリ落ちそうになったところを危うく支えた。
「危なっかしいな」
「なんか嬉しくて…フワフワしてる」
「気をつけろよ」
手を振って登っていく姿を見ながら、なにか不思議な感情が込み上げた。
俺の、彼女。
ほんの数ヶ月前まで知らなかった同士が、お互いを大切に感じる気持ち。
青木がかけてくれた言葉で、自分を少し好きになれた。
自分にしか出来ない何か、俺にもあるはず。
欠点を呪ってばかりいても始まらない。自分なりに、自分の歩き方で、進んでいく。
プレゼント、か。
人生から、プレゼントを貰った気分。
今日のこの感じ。
たぶん俺、一生忘れない。